社会

震災原発の支援とは− 猪飼論文の若干の感想

猪飼周平さんの論文について感じたことを少し絞って書いておきます。 原発震災に対する支援とは何か ―― 福島第一原発事故から10ヶ月後の現状の整理 最初にいっておくと、私の知る限りでは、原発・震災について記述された、もっとも分かりやすく体系的に問題…

竹原信一から大学入試問題ネット投稿事件まで

橋下の大阪から遠く離れた地方の自治体で、そのふるまいが他に類をみない一人の首長がいた。たとえば、彼のやったことはといえばこんな具合。市長を務める自らの自治体の全職員分の給与明細を公開した。たぶん本人の了解なしに他人の給与を明らかにするとい…

沈黙の螺旋再び

国会が閉会したところから政治がはじまる。 伝えられるニュースはそのままこれを裏づけているかのよう。新しい勢力を構築しようとするねらいとそのための動き、政権政党内の亀裂、それに米国の動向が伝わってくる。野田にとっては、どこかでそれぞれがつなが…

電車の中の光景。

最近、よく見かけるようになりました。電車に乗るのは通勤時くらいのものですが。 電車の中の光景として記事が扱っているのは、電車という公共空間のなかで化粧という行為、つまり私事をおこなうことについてです。【Re:社会部】電車の中の光景 この産経…

医療の社会的役割をとらえ直す −その経済波及効果

「毎日新聞」の「医療クライシス」という連載について。 連載4回目は、医療の波及効果がテーマ。 http://mainichi.jp/select/science/news/20080620ddm002040075000c.html*1財政を圧迫するという理由で社会保障費を抑制してきたツケが今、たとえば医療崩壊…

自分を律するということ。

研修をさせようという大阪府知事の判断の前に、府の職員には「自分を律する」ことができていないという事実が先行していなければならない。 同時に、職員が(自分を)律しえているか否かという点での橋下氏の判断の是非、これは当記事だけではあきらかではな…

]「生活保護には後発医薬品で」と差別を強要しようとする問題。

生活保護受給者を他から切り分けて、後発医薬品を使えという厚労省の指示を批判してきた。けれど、生活保護受給者は権利の上でも他とは区別されるべきだという意見も少なくないように思える。 「生活保護を受けるのなら、受けない人と同じ権利は得られないの…

厚労省の差別拡大主義。

社援保発第0401002号通知。 「生活保護の医療扶助における後発医薬品に関する取り扱いについて」という、問題の厚生労働省の通知を受けて、函館の福祉事務所が発信した文書を下記エントリー(下記リンク)で紹介した。

医療費を抑制するための便法。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080415k0000m040124000c.html 経済的な理由で、医療機関にかかることをやめた経験をもつ者が3割に及ぶ。 こんな結果が、日本医療政策機構*1の調査で明らかになった。 記事がいうように、この間の「制度改正」で自…

年金天引きの日−新しい医療制度はうまくいくか。

本日は、新医療制度の保険料年金天引きの日。 後期高齢者医療制度、いや長寿医療制度で、その保険料が年金から天引きされる、新しいシステムが動き出す。 とはいえ、この新しい医療制度は、最初から躓いている。 保険証が届かないという苦情の多さ。事実上、…

江原啓之「ハッピー筋斗雲」事件は決着なのか。。

フジテレビ:江原さん出演番組で報告書公表 http://mainichi.jp/photo/news/20080403k0000m040187000c.htmlフジテレビは2日、昨年7月に放送した「FNS27時間テレビ」の中でスピリチュアルカウンセラー(霊能師)の江原啓之(ひろゆき)さんが一般女性…

医療崩壊にたちむかう一つの試み。

医療というものを医療従事者と患者の共同の営為といってみたところで、医療(サービス)を提供する側と受ける側という非対称が現にあることは否定しえない。 つきつめていえば、この非対称性に、理不尽なとしばしばよばれる、クレームやふるまいが派生してし…

滝川介護タクシー事件と生活保護

元組員が介護タクシーをつかって滝川市から札幌市まで通院したようにみせかけ、多額の移送費を受け取っていたという報道に驚いた人は多いだろう。 厚労省はこの事例をたてにとって3月3日、社会・援護局関係主管課長会議において、本件の発生を口実に「通院…

新医療制度は撤回したほうがよい。

この4月から「後期高齢者医療制度」という新しい制度がスタートする。 75歳以上の人は全員、この制度に移行する。これまでの国民健康保険制度とは異なり、一人一人が保険料を負担しなければならない。高齢者でなくとも、医療制度の中身まで熟知している人…

医療崩壊は打開できるのか。

id:coleo:20080310:1205136814で言及した「医療崩壊の現状分析と対策に関する考察」(概要版)から紹介する。上記「考察」の要約は以下のとおり。 医療崩壊が社会問題となり、政府・与党は緊急的に医師確保、医師派遣といった対策を打ち出してきたが、医師派…

保険料滞納者の受診は抑制される。

滞納してしまうと、その代償として受診抑制を選択せざるをえないということか。 国民健康保険料(税)を1年以上滞納し、保険証の代わりに資格証明書を交付された人が受診する頻度は、全国保険医団体連合会(保団連)の調査で、一般の人の2%未満と極めて低…

「正規が非正規を搾取する」(赤木智弘)のか。

赤木智弘の『若者を見殺しにする国』は、売れている。ぼくの『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』の売れ行きなど問題にならないくらいに。だって発売15日で2刷りだよ! この種の本でありえねえだろ。くそう。橋本健二『新しい階級社会 新しい階級闘争』 …

フランスも日本も医療の危機。

日本の医療崩壊が指摘されている。同じことがヨーロッパでも起きているらしい。今日の日本からみると、フランス、お前もかと思える、こんな書き出しではじまる。 「フランス医療制度の危機」という、『ル・モンド・ディプロマティーク』の文章だ。

「お前の代わり? いくらでもいるよ」。

思惑どおりに抵抗もなく事を運ぼうと思えば、暗黙の了解が要る。根回しが常態化するのも、了解をとりつけることにほかならない。 案件が理不尽なものである場合、この「暗黙の了解」状態はなおさら必要となる。そのために四方八方からの力と全神経とが注がれ…

医療崩壊の経済

救急医療の現状をとらえた産経新聞の連載が終わる。 【風】医療費抑制策が崩壊招く?今回のタイトルがいわば結論だろう。 疑問符がついている。が、現状をみるかぎり疑問符なしでよさそうだ。 今回の記事は、ある開業医の意見を進行役として進められている。

社会保障をダシに消費税を語るということ。

日本はヨーロッパ諸国にくらべると消費税は安いと思っている人は多いようだ。寄せられたコメントのなかにもそんな意見があった。日本はまだまだ安いということと、消費税は社会保障のために上げざるをえないと、この2つのことを周りからよってたかっていわ…

政府が医師不足を認める。

医師は不足しているのではなく偏在しているのだ、というのが政府の公式見解だった。 これまでの態度をあらため、政府は12日、ようやく医師不足を認めた。閣議決定による。 医師は総数としても充足している状況にない

橋下こそ憲法を学ぶべき。 

橋下徹次期大阪府知事が岩国の住民投票には反対と語ったそうである(参照)。この発言が、橋下当選の余勢を借りて岩国市長選を有利に導こうとするところにねらいがあることは、想像にかたくない。それだけではなくて、ここで問題にするのは、橋下氏の発言の…

朝日社説;希望社会への提言(14)へのコメント。

件の朝日「希望社会への提言」の14番目*1。いくつもの論点が散りばめられている。賛成するところもあるし、同意しがいたところも少なくはない。気づいた点を以下、列記したい。それぞれ当ブログのコメント、対応する提言部分の順に記す。 *1:希望社会への…

『世界』2月号−医療崩壊を特集

『世界 2008年 02月号 [雑誌]』が「医療崩壊をくい止める」という特集を組んだ。特集のハイライトは、宇沢弘文氏と出月康夫氏の対談である。「社会的共通資本としての医療をどう守るか」と題して、医療崩壊の全体像を明らかにしている。宇沢氏は、よく知られ…

08年は投機マネーの撹乱で幕開け。

『クローズアップ現代』の8日放送「新マネー潮流」は好評をえているようだ。私は見損ねたが、ご覧になった方から長文で、しかも充実したコメントを頂戴した。 ところで「新マネー潮流」の内容紹介をみると、 いま世界には150兆ドルとも言われる天文学的…

ガソリン税暫定税率廃止か否かという問題か。

道路特定財源をめぐる対立が解散の引き金になるかのような議論が一部で交わされているようだが、ガソリン税の暫定税率を維持するか、元にもどすのか、という問いのたて方は違和感を覚え、しっくりこない。 そもそも特定財源の是非を語らなければならないので…

「朝日」元旦社説が欠落させた事情。

「花・髪切と思考の浮游空間」に以下の記事を公開しています。「朝日」に欠落する視点−二大政党をめぐる日米の違い

07年の日本。

「花・髪切と思考の浮游空間」に以下の記事を公開しています。『ダーウィンの悪夢』から日本の生活保護まで。 07年をタイムスリップする。

混合診療全面解禁見送りだが。条件づくりは終わっている。

政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は25日、第2次答申を決定し、求めていた焦点の混合診療の全面解禁を見送り、既存制度の拡充を求めるにとどまったそうである。 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071225dde001010002000c.htmlしか…