08年は投機マネーの撹乱で幕開け。


クローズアップ現代』の8日放送「新マネー潮流」は好評をえているようだ。私は見損ねたが、ご覧になった方から長文で、しかも充実したコメントを頂戴した。
ところで「新マネー潮流」の内容紹介をみると、

いま世界には150兆ドルとも言われる天文学的マネーがあふれている。その流れは、米・サブプライムローン破綻をきっかけに大きく変わりつつある。混乱した金融市場を嫌い原油穀物市場に流れ込んだマネーは、ガソリンや食料品の高騰といった形でわたし達の生活を直撃している。また、アメリカ経済の減速が世界経済に及ぼす影響も懸念されている。2008年、わたし達の暮らしや景気を左右する"マネーの潮流"はどう変わろうとするのか。それを、(1)オイルマネーと政府系ファンド、(2)アメリカ経済の今後、(3)中国"バブル"の行方、の3つのキーワードをもとに、日本との関係で読み解き、2008年を占っていく。

とあるから、世界市場を混乱に貶めている投機マネーの暴走をえぐり、世界と日本の経済のゆくえをスクープしたものと推測される。
なるほど2008年の幕開けは、ニューヨークの原油先物市場が史上最高値を記録し、その影響もうけて株価が暴落するという大混乱であった。この5年間で3倍以上にも高騰しているといわれる原油市場の加熱ぶり。原油の需給逼迫などの構造的問題のほかに、イラク戦争の泥沼化など中東産油国をめぐる情勢悪化などが背景にある。
こんな原油市場の複雑さを利用して膨大な投機資金が流れ込んで、価格をつりあげているのが混乱の最大の要因だろう。
加えて、アメリカの低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の破たんが先進国の金融市場を揺るがし、金融市場からあふれ出した投機資金が、原油市場だけでなく穀物市場にも流入、その結果、食料品の値上げをもたらし生活を直撃しているのである。というのも、サブプライムローンをもとにした金融商品を最先端商品としてまつりあげ、欧米、日本の金融市場に拡散していたからだ。巨額の投機資金が生活の基盤ともいえる食料やエネルギーをも左右する事態をよしとしていいのか。
頂戴したコメントの主張の一つはこの点にあると私は思う(コメント全文)。

庶民は不景気感が強く、大量生産や大量販売の現場で海外と同じ低賃金雇用されることを我慢し、共働きや副業を増やすことでなんとか人並みの生活をしようと日常生活のエネルギーや時間を奪われたつつ必死で働き、慎ましい生活を我慢して送り続けています。
庶民は、非正規雇用の低賃金で優良企業を支え、企業は、従業員、労働者と苦楽をともにしない見ず知らずの投資家に好配当を与え遊ばせている状態になっています。

このコメントの把握は正確である。
コメントをいただいたエントリーは、格差・貧困と財界のエゴイズムというもので、公開して1年にもなろうとするものだが、この中で、努力すれば報われるという言説のいかがわしさについてふれながら、以下のようにのべた。

財界・支配層が、中・低(所得)層の困難にもかかわらず、そこにまるで傷に塩をすり込むかのようにいっそうの負担を押しつけ、上層を優遇しようとすることは、財界・支配層の権益を確保し競争にうちかっていくための、社会構造の再編の表れといっても過言ではありません。あるいは階級構造の再編といってよいかもしれません。
あらためていいたいのは、「努力すれば報われる」という言葉のうらには、上層の「努力」による成果は、現実には「報われない人」びとの努力によって支えられ、もたらされたものであることです。

端的にいえば、庶民に貧困をおしつけ、あるいは負担を強いる一方で、巨額の利益を得るという構図で富を集中させてきたのが財界なのである。
報道によれば、経団連会長・御手洗富士夫氏の続投が決まったそうである。
前会長をひきつぎ、御手洗氏は、いっそうの大企業・財界優先の政治を政府・与党に迫ってきたといえる。しかし、ここにきて、控えめな気がしないでもないが、メディアがいっせいに冷えた家計を問題にしはじめた。
政治の課題として、これまでの大企業・財界優遇から、いかに国民生活を支えてゆくか、家計を温め個人消費をふやし、日本経済に活気を取り戻す方向に切り替えるのか、を中心にすえるべきではないのか。
今年の幕開けが、投機マネーによる混乱であっただけに、なおさらそう実感する。