橋下氏を若者が押し上げたという件(メモ)

大阪市長選の投票率、若い世代が押し上げていた

 大阪市選挙管理委員会は21日、昨年11月に行われた市長選の年齢別投票行動の調査結果を公表した。
 前回選の投票率を30代で20ポイント、20代で16ポイントそれぞれ上回るなど、若い世代の関心の高さが、40年ぶりに6割を超える投票率につながったことを裏付けた。
 知事選とのダブル選となった市長選は、平松邦夫・前市長と前知事の橋下徹市長の直接対決に全国的な注目が集まり、投票率は60・9%と、前回より17・3ポイントアップした。
 調査は市内24区から5%ずつ抽出した有権者計約11万人を対象に実施。前回選との投票率の比較では、30代が20・8ポイント増の52・8%と最も上昇。20代は37・5%、40代は59・5%、50代は66・9%で、それぞれ17ポイント前後アップしていた。
(2012年2月22日08時09分  読売新聞)

橋下大阪市長の動向は、彼の一つひとつがリアルタイムで報じられているように、賛成する人も反対の人も、中央ももちろん大阪も、そして右も左も、無視できないもようといえる。

その圧倒的な人気は、記事が伝えるところからもうなづける。同時に、ちょっと疑問にも思ったりもして。
疑問に思ったのは、記事が若い世代が押し上げたと見出しをつけていることにたいして。記事が伝える範囲でも、若者の投票率が高くなっているのは明らかなのだが、他の年代にくらべて格段に高いといえるのかどうか、有意差があるのかという点。
上記「読売」の記事にある今回の年代別の得票率を前回と比較したものが以下の表(前回分は大阪市選挙管理委員会資料)。

今回 前回 差異
20代 37.5 20.8 16.7
30 52.8 32.0 20.8
40 59.5 41.8 17.7
50 66.9 49.8 17.1
60 73.7 61.2 12.5

これから読み取れるのは、以下。

  • いずれの世代も得票率が10ポイント以上上回った。
  • 得票率の伸び率は、30代>40代>50代>20代 の順である。


若い世代が押し上げたということは、その世代の投票率が他の世代と比較して高いことを意味するだろうけど、いうほどのものではないだろ、と思える。たしかに30代の投票率アップが、たとえば40代や50代と比較すると3ポイントほど高いにしても、それは見出しを裏づけるようなものなのか。ましてや20代はといえば40代や50代より伸び率が低いのだから。そもそもすべての年代で投票率がアップしているし、20代、30代がともに他の世代よりたとえば10ポイントほども高いのだったら、疑いなく記事に賛成するのだが。

ちなみに大阪市選挙管理委員会報道発表の文章はつぎのようなもの。記事のように若い世代に言及してはいるものの、押し上げたと評価をしているのではなく、「30歳以上39歳以下の年齢層の投票率が、前回投票率を20%を超えて上回っている点が特徴的」と事実のみをあげるにとどまっている。

 結果は、前回選挙時を17.31%も上回る60.92%と、同じく昭和46年以来40年ぶりに50%を超える投票率となった。
年齢別の投票率は、20歳以上24歳以下の年齢層が最も低く(35.15%)、その後年齢が上がるにつれて投票率も上昇し、70歳以上74歳以下の年齢層でピークとなっている(78.44%)。この結果は前回・前々回と同様である。
年齢別の投票率では、各年齢層で前回投票率を上回っているなかでも、30歳以上39歳以下の年齢層の投票率が、前回投票率を20%を超えて上回っている点が特徴的である。
男女別の投票率の比較では、総じて女性の投票率が、前回・前々回と比べても男性の投票率を引き離しているが、39歳以下の若年層の男女間の投票率の差が際立っている点が特徴的である。その他、55歳以上59歳までの男女間の投票率の差が10%近くまで広がっている点、前回・前々回と男性の投票率が女性の投票率を上回っていた70歳以上74歳以下の年齢層において、今回女性の投票率が男性の投票率を上回っている点も特徴的である。
「読売」はどこかに若者に支持された橋下氏というイメージが頭から離れない、いわば先入見にとらわれていると思える。事実は、市選管の結果発表に示されているように、すべての世代が投票率で前回を上回り、その結果、橋下市が約6割の得票を得たということ(下記;前回までの年齢層別投票率推移、同選管)。つけくわえれば、前回選挙でも各世代で前々回を大きく上回っている。