東アジア共同体、先に進むのかな。

花・髪切と思考の浮游空間」に以下の記事を公開しました。
「東アジア共同体」具体化への道



東アジア共同体で大きく足を踏み出す。
これなら大いに結構なことです。伝えられる限りでは、その内容がもちろん定かではないにしても。随分、以前のエントリーでこ東アジア共同体にふれました。
いずれにせよ、東アジアの政治・経済が、今現在の世界にさまざまな影響を及ぼすことは誰も否定しがたいでしょう。

上野央絵記者(*1)による記事を久しぶりにとりあげます。

日中首脳会談:鳩山首相、胡主席に東アジア共同体構想提案

鳩山由紀夫首相は21日夜(日本時間22日午前)、ニューヨークで中国の胡錦濤国家主席と会談した。首相は、日中間で懸案となっている東シナ海ガス田開発に関して「いさかいの海から友愛の海にすべきだ」と指摘、日中共同開発に関する協定の早期締結に向けた作業の加速化を求めた。東アジアの経済協力や安全保障の新たな枠組み作りを目指す東アジア共同体構想について首相は「日中両国が違いを乗り越えて信頼関係を構築していきたい」と提案した。

 首相就任後初の外国訪問で行う初の首脳会談となり、鳩山首相のニューヨーク到着直後、予定時間を20分超えて約1時間に及んだ。日本側からは岡田克也外相、小沢鋭仁環境相らが同席。中国側からは王岐山副首相、戴秉国(たいへいこく)国務委員、楊潔チ(ようけつち)外相らが同席した。

 首相は、日本が侵略や植民地支配を行ったとして謝罪した95年の村山富市首相(当時)による「村山談話」を踏襲する立場を表明。首相は「お互いの違いを尊重しあえるような外交をしていくのが友愛の外交」と指摘した。自民党政権時代からの中国との戦略的互恵関係について、首相は「政権交代したので、もっと中身のあるものにしていきたい」と強調した。

記事には、後段で、会談の要旨が加えられていますが、それも当該箇所は以下のようなごく簡単なもの。これ以上、この会談自体に踏み込めません。


日中関係東アジア共同体

 鳩山由紀夫首相 互いの違いを認めながら信頼関係を構築していく。東アジア全体の共同体を構想していきたい。戦略的互恵関係を引き続き構築する。

 胡錦濤国家主席 首脳級の往来の頻度を上げたい。食い違いがある問題は大所高所からやりたい。

東アジア共同体についてとりあげたと先にのべましたが、そのエントリーは進藤栄一氏の著書を紹介しています。氏はその『東アジア共同体をどうつくるか』のなかでこう言及していました。

確かに冷戦終結15年後、ポスト・ポスト冷戦下の今日、東アジア地域の中心的安全保障は、ウェストファリア体制固有の伝統的安全保障課題―「攻撃するか攻撃されるか」―にはない。むしろ国境を越えた海賊やテロ、麻薬や人心売買、山火事による円買いや水質汚染、黄砂などの環境劣化、SARSや鳥インフルエンザの拡延のような非伝統的な安全保障課題である。

吼える中国とその「脅威」−6カ国協議休会を考える

東アジアの地域で存在するのは、いずれも貧困や開発や経済発展の過程に潜む問題や脆弱な政治体制によってもたらされるリスクであって、軍事的脅威などではないということでしょう。だから、こうしたリスクを解消するには、他国からの侵攻に抵抗する軍事的手段や防衛などではなく、自国内あるいは地域的な政治的・社会的秩序の安定化だというわけです。
共同体として出発するには、日本と東アジア諸国の非対称性、つまり大部分の東アジア諸国とちがって被植民地化の体験をへておらず、西欧列強と同様に植民地国家としての歴史を歩んできたという事実にたたなければ、先にすすめないでしょう。この点で、鳩山氏は件の村山談話に言及したわけです。
一方で、この会談とほぼ平行しておこなわれた岡田・クリントン会談にも注目せざるをえません(参照)。日米の関係のあり方、とくにこれまでのような盟主アメリカの追随に終始する姿勢であればなおさら、共同体構想は無縁ではないからです。
しかし、この会談で確認されたことの一つは、日米同盟の重視でした。常々、対等な日米関係を強調しているのですから、日米同盟強化は現実の日米安保条約があるもとでは対等な関係を意味しないでしょう。

具体化へすすむには、解決しなければならない重要な課題が山積しています。が、東アジア重視の立場が表明されたことは歓迎しなければなりません。まだまだ不透明の部分が多いわけですが、態度の表明からさらに一歩、具体化にむけて踏み出してほしいものです。
(「世相を拾う」09197)



*1;「毎日」記者の目は地位協定をどうとらえたか。