トヨタの圧力で歪められるもの。

「花・髪切と思考の浮游空間」に以下の記事を公開しています。

トヨタがにらむと、こんな記事になる。。。

いまの日本のマスメディアが、広告宣伝費にその経営を支えられていること、したがって、その事実があることから依頼主の大企業に頭があがらぬことにふれました。
以下は、その結果、新聞社がどのような記事をつくるのか、そのことを明瞭に示す一例だと私は思います。
こんな記事の存在を、ぬるまゆにつかってすごす日々のこんたさんからのコメントではじめて知りました。

重大なことだと思います。その記事は以下。

大阪ひき逃げ 押収車は黒のワゴンタイプ 20代従業員の所在不明

大阪市北区梅田の交差点で堺市東区の会社員、鈴木源太郎さん(30)が車にはねられ、約3キロ引きずられて死亡したひき逃げ事件で、曽根崎署捜査本部が大阪市此花区内が発見、押収したのは黒いワゴンタイプの車だったことが4日、わかった。

捜査本部は、これまでの調べや目撃証言などから、鈴木さんの遺体が見つかった福島区吉野を起点に、逃走方向とみられる同区や此花区で「黒いワゴン車」を1台ずつ調べる「車あたり」を実施。今月1日、建築会社が借りている此花区内の駐車場で不審な車が止めてあるのを発見した。

これまでの調べで、犯行車両の可能性のある黒いワゴン車が、遺体発見現場から南西の此花区内の複数の防犯ビデオに写っていたことがわかっている。今回押収された車両は、当初言われていた「ホンダ・オデッセイ」とはメーカーが異なるが、よく似たタイプだという。

一読いただいた読者のみなさんは、どうお感じになるのでしょうか。
記事が扱っている事件は、大阪で起きたひき逃げ事件で、犯人は数キロにわたって被害者を引きずったとされるものでした。事件の鍵は、証言により黒いワゴン車ということが明らかになっており、当然、車種が何かがその一つであったことも自明でした。
記事は、すでに当該の車両が押収された以後のものなのですが、記者は車種に関して上記のような表現をしているのです。かえって、異様な記事だと思いませんか。この表現が私たちに違和感をむしろ与えないでしょうか。もやもやしたものを、読んだあとで感じないでしょうか。
あえて、点線をほどこしましたが、その部分に着目してもらいたい。

記者が意識していようがいまいが、表現から読み取れるのは二つのことです。
一つは、いうまでもなく特定自動車メーカーと車種をあえてあげていること。しかも、なぜそのメーカーが特定されなければならないのか、はっきりしません。
二つ目は、よりこちらのほうが重大なのですが、先の特定されたメーカーとは「異なるメーカー」を特定せず、あいまいな表現にとどめているということです。

根拠もなく特定のメーカーの車種をあげておきながら、犯行に使用されたメーカーと車種を明らかにしないという落差、記者のこの態度に、メーカーの圧力を感じてしまうのです。

重ねていえば、こんたさんは、その種明かしをして、幣ブログへのコメントでこう表現しています。

イプサムが、
「ホンダ・オデッセイ」とはメーカーが異なるが、よく似たタイプだという。

という表現になります

すでに、メディアはペンを折っているのではないか。ペンは剣より強し、という言葉がありましたが、いまやその逆です。剣が強いのです。この場合、明確に剣とは大企業(の圧力)と指摘せざるをえません。

幣ブログはこうしたモノがいえない背景に経営的に広告収入に依存している実態に言及してきました。新聞協会の決算報告からもその実態の一端を垣間見ることができるように思えます(参照)。

思うのは、メディアがこのように経営的に財界・大企業に支配させているように、政治の世界でも同様の事態が進行していることも深刻です。つまり、日本の政治の世界では、財界・大企業からの企業献金という形で支援を受けていると、たちまちモノがいえなくなる病気に罹ってしまうということです。

その証拠に、キヤノンの派遣、トヨタの派遣使いまわしを共産党が追及し、現実に改善させているのですが、それとは比較にならないほどの議席をもつ民主党は、大企業の横暴をストップさせるのにどれほどの力を発揮しているのでしょうか。寡聞にして民主党が動かした事実を私は知りません。そこに、メディアと同様の、対大企業・財界の関係をみてしまうのです。やはりモノがいえない関係なのでしょうか。
(「世相を拾う」08236)




トヨタがにらむと、こんな事実が隠される

報復でもしてやろうかとなどと公言してはばからないトヨタ・奥田氏。
何がこうも彼を「増長」させるのでしょうか。
そのごくごく一端を、昨日のエントリーでふれていますが、少しその点に立ち入ってみます。

昨日は、以下のように記しました。

メディアがいかに大企業に首根っこをおさえられているか、極論すれば支配されているかということです。当ブログではこれまで、現代のマスメディアが経営的に広告収入に支えられていること、したがってその分、大企業の広告に拠る実態があることを指摘してきました。その結果、大企業の顔色をうかがうはめになるというものです。

トヨタ自動車は日本でいちばん広告宣伝費を使う企業です。
年に1000億円以上は使うともいわれていますから、新聞もテレビも広告宣伝費がないとつぶれることにもなりかねないわけです。ですから、スポンサーたるトヨタに都合の悪い報道はできないことになるのです。

その一例。
2年後には消費税引き上げ法案を提出するといった麻生首相です。このところ漢字の読み間違えで話題をさらっているわが首相ですが、この発言は、あらためて消費税増税の課題が支配層にとって避けてとおれないものであることを表明したといえるのではないでしょうか。もっとも首相の発言は、この時勢ですから、経済がうまくいったらという条件つきを表向きにしたものではあるのですが。
しかし、これを首相の読み間違えと同程度の問題として聞き流していたらもちろんたいへんです。

当ブログでは、折に触れて、消費税の問題点について言及してきました。
その一つは、消費に課税されるという税の性格から、所得の低い人びとにとって負担割合が高くなるという逆進性についてでした。それから、社会保障の財源問題とからめてこの税の増税が語られてきましたが、社会保障というものが本来、所得の相対的に高い人から低い人への再分配の機能をもつという点を尊重するとすれば、低所得者ほど負担割合が高い消費税をその財源にあてるというのは整合しないのです。

ところが、再三にわたって消費税増税を不可避なものとして宣伝し世論をつくろうとするのが政府と財界・大企業です。
財界・大企業にとっては、消費税による税収が法人税減税を支えてきたという事実があるのですが、消費税増税固執する理由はそれにとどまりません。
言い方をかえると、消費税というのは、日本を牛耳る大企業、輸出製造業のための税金といっても過言ではありません。日本でいちばん輸出製造業でもうけているのはトヨタ自動車です。ですから、この円高のなかで経営見通しを下方修正することにもなったのですが、ともあれ、トヨタ自動車は一円も消費税を払っていないのです。
この点をこれまで報道できたメディアがいったいあるのでしょうか。

トヨタ自動車は、一円も消費税を払わずに1年間におよそ3000億円の税金の還付を受けているのです(下図)。この仕組みは、以前にもふれました。輸出した製品の消費税は0%の税率をかけて計算することにあります。
消費税は、売上から消費税のかかっている支出を差し引いたものに、5%をかけることになっています。つまり、計算式は(課税売上−課税仕入)×5%、となります。
ところが、税率0%ですから、トヨタの例でいえば、輸出役8兆円にたして消費税は0円です。国内売上に関しては1793億円が課税されるべき消費税ということになる。
一方で、差し引かれる消費税は、消費税がかかる支出が9兆3240億円ですから、その5%・4662億円がさしひかれることになり、つごう2869億円の還付という結論になるのです。

ですから、消費税の税率が上がれば上がるほど、トヨタ自動車に還付される金額は大きくなるという、おいしいものなのです。税率が倍になれば、倍になってかえってくる。

経団連など財界・大企業、そして大新聞がこぞって消費税増税の合唱をつづけるのは、消費税が大企業のための税金であるということと、宣伝広告費で経営の首根っこを抑えられ、モノがいえないメディアという厳然とした構図があるからです。
(「世相を拾う」08234)