トヨタの傲慢
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世は大企業の天下なのか− トヨタ・奥田発言
トヨタ奥田氏「厚労省たたきは異常。マスコミに報復も」
トヨタ自動車の奥田碩相談役は12日、首相官邸で開かれた「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の席上で、厚労省に関する批判報道について、「あれだけ厚労省がたたかれるのは、ちょっと異常な話。正直言って、私はマスコミに対して報復でもしてやろうかと(思う)。スポンサー引くとか」と発言した。
奥田氏の発言は、厚労行政の問題点について議論された中で出た。「私も個人的なことでいうと、腹立っているんですよ」と切り出し、「新聞もそうだけど、特にテレビがですね、朝から晩まで、名前言うとまずいから言わないけど、2、3人のやつが出てきて、年金の話とか厚労省に関する問題についてわんわんやっている」と指摘し、「報復でもしてやろうか」と発言。
大企業いいなり、大企業の傲慢さは、こんな一面に、こんな形で現れるという好例です。
しかも、天下のトヨタ・奥田氏の発言ですから、典型といってよいでしょう。
曰く、
報復でもしてやろうかと(思う)。スポンサー引く
この言葉は、メディアの現実を端的に照らしています。
結論づけていえば、メディアがいかに大企業に首根っこをおさえられているか、極論すれば支配されているかということです。当ブログではこれまで、現代のマスメディアが経営的に広告収入に支えられていること、したがってその分、大企業の広告に拠る実態があることを指摘してきました。その結果、大企業の顔色をうかがうはめになるというものです。奥田氏の先の言葉は、このメディアと大企業の関係をリアルに物語るものではないでしょうか。
奥田氏の言葉は、その意味で恫喝にもうけとれる。
分かりやすくいえば、下手なことをいうな、いえば兵糧攻めにするぞといわんばかりの態度といってよいのかもしれません。
奥田発言に象徴されるメディアと大企業の極端な非対称の関係性は、すなわち報道全般に貫かれていると考えてよい。
大企業にとってよからぬ報道は捨象され、都合のよいように、しかも大企業の思惑どおりに報道されかねない、ゆがみがそこに生じるということです。
たとえば昨今の、トヨタの派遣切り。事実としてそれを伝えるメディアは少なくありませんでしたが、その社会的影響をえぐりだすような報道があったかといえば首をかしげたくなります。ましてや、これほどの世界的大企業たるトヨタの「社会的責任」に鋭く迫る報道には、ついぞお目にかかることはありませんでした。
社会の公器であるのなら、本来、そうした立場から切り込むことがメディアにはもとめられているのでしょうが。
少し敷衍してとらえると、こうした大企業の圧力は、選挙時にはいよいよ二大政党に集中する報道姿勢にも直結しているということを想像させるに十分です。二大政党政治を志向してきた勢力のなかに厳然として財界・大企業があるのですから。
たとえば自民、民主のやりとりしか登場しない、この間のテレビの報道の傾向は、それを強く印象づけているようにしか思えないのです。
まあ、財界・大企業の意向にいくらかでも反すれば、手痛いしっぺ返しが待っているのですからね。
(「世相を拾う」08233)