世相を拾う(11月12日)

大企業の横暴と「正社員になりたい」という思い。

派遣労働者:「わたしは正社員になりたい」が5割−−厚労省調査

3万人近い母数ですからりっぱな調査といえる。
なかには、非正規のほうが「自由が利く」などと考える向きもあるようです。が、じっくり考えてみると、その場合の「自由」なるものも、意外と肩身の狭いものであったりする。自分の好きなように労働する時間を決めることができ、好きな時間だけ働くことができるなどと思って、自由だと思うと根本からまちがっていないかどうか、振り返ってみる必要がありそうです。
「好きなように労働する時間」を決めることができると思っている人は、(雇い主たる企業側の)好きなように働らかされていると考えたほうがよいでしょう。そして、「好きな時間だけ働く」とはすなわち世間相場に厳然として縛られた結果、たとえば決められた賃金以上に賃金を受け取ることは不可能だという意味で、相手の土俵、つまり雇い主の思うつぼで働かされていると思ってよいでしょう。少なくともあなたの労働力の価値には遠く及ばないものとして評価された賃金でもって。

つまりこのような条件のもとで働いてもよいと考えることのできるのは、それを補う余剰部分をどこからか補填できる、その手立てがある場合でしょう。たとえば、生活費の大部分に自分は責任を負う必要がないとか、です。こんにち、その条件も途絶えつつあり、圧倒的にはそんなことを期待できるでもななく、したがって調査結果の示すとおり、正職員志向は強まらざるをえません。

労働者をとりまく環境という点で、記事にも示すとおり「派遣切り」が横行する世の中なのです。世界金融危機がなお深刻になるなかで、日本にも徐々にその影響が現れてきました。最近のトヨタなどの派遣切りのように。
労働者にとっては、まったなしに迫ってくる企業の横暴勝手なのですが、しかし、わが身に降りかからぬようにと考える労働者は、率直にいえばけっして少ないないでしょう。こんなときこそ、働くものが一丸となって狼煙をあげる、これが本来の構図であってほしいと半ば願望じみて考えてもみます。

企業は、どんなときでも最大利益を追求します。
グローバル化した経済の中であっても可能なかぎりの利益を追求するために、正規を非正規に置き換えることによって、それを可能としてきました。
具体的には以下の形態をとってきたということです。

昨日の「しんぶん赤旗」では、トヨタ車体の「派遣使い回し」問題が1面トップを飾っていました(*1)。「派遣使い回し」とは、企業が最大追求する際の、具体的な手法なのでしょうが、そのやり口は、いわば法の網の目をくぐりぬけるようなものです。すなわち、派遣労働には「臨時的・一時的」という原則がついてまわります。そのため労働者派遣法には最大3年という派遣労働の制限が設けられています。それを超えると派遣先企業は労働者に直接雇用を申し込む義務が発生するのです。
それを追及され、トヨタ車体が「派遣使い回し」を中止したというのです。きっかけは志位共産党委員長の予算委員会質問だというのです。大企業のこうした横暴勝手をただす、これを本来なら野党第一党たる民主党が、その力があればこそやってほしいのですが、この種の問題で民主党の名がでてきたことを寡聞にして知りません。
大企業には音なし。これが、私の感じている民主党の姿です。これでは自民党とと区別しようと思ってはほとんど不可能ではないでしょうか。

ですから、こんにちの日本政治にゆがみをもたらす要因の一つが、大企業・財界優先、そしてその横暴勝手を許している姿にあると私は考えているので、野党第一党たる民主党の姿に常々、失望させられるのです。

そうではないよと力強い反論を期待したいものですが、現実がそれをはっきり打ち消しているように思うのです。
この限りで民主党はまったく役立たず。それでも、大企業の横暴勝手−この場合はトヨタ車体の期間制限偽装−が少しづつではあれ、しっかりと暴かれているように思うのです。
(「世相を拾う」08231)

*1;しんぶん赤旗」によれば、トヨタ車体では、A直とB直の二グループがあり、一週間ごとに昼夜勤が変わります。同社は、10月からA直の派遣社員をB直に集め、A直の派遣社員をゼロにしました。「三カ月と一日」が過ぎると、今度はB直の派遣社員をA直に集め、B直の派遣をゼロにします。A直、B直で派遣社員がいない「三カ月と一日」の期間を交互につくり、派遣社員を永続的に使いまわそうというものです。この「三カ月と一日」が「クーリング期間」といわれています。