世相を拾う(11月7日)
税のとり方、使われ方を問う− 「社会保障国民会議報告」雑感
25年度、消費税6%上げ 国民会議が最終報告
政府の社会保障国民会議(座長・吉川洋東大大学院教授)は4日、首相官邸で会合を開き、最終報告をまとめ麻生太郎首相に提出した。年金や医療、介護、少子化対策など社会保障機能を強化する必要性を訴え、消費税増税を念頭に、安定財源確保に向けた税制改正論議を求めた。
消費税増税は避けられないのか否かという点では、上記のように社会保障国民会議は、消費税増税しか想定していないということです。
税源をどこに求めるのか、これはすぐれてその人の政治的、階級的立場を反映せざるをえない設問でしょう。最終報告は、記事にあるように「現在の社会に生きている国民がみな、応分の負担に応じなければいけない」と強調しているのですが、応分の負担をいうのであれば、大企業・財界にその言葉を返さなくてはなりません。
上図が示すのは、消費税導入以来の消費税による税収が188兆円であるのにたいして、当該期間の法人税減収分が159兆円にものぼるということです。この時期に、法人税の税率が40%から30%に引き下げられているわけですから、消費税税収が企業減税を支えてきたということになります。07年まで大企業は史上最高の利益を更新しつづけて、バブル期を税負担は下回っているのです(参照;中図)。
同時に、国民にとってはこの期間はどうだったのでしょうか。消費税増税の際、必ずといってよいほど社会保障が口実にされます。
下表は、実際はそれがまやかしであることを証明しているのではないでしょうか。健康保険本人の医療費一部負担割合は3割になりましたし、老人医療も負担増。国民年金も、さらには年金開始年齢も改悪されました。
次々に改悪され、社会保障の充実や高齢化社会に備えるためにという政府の言い分がごまかしでえあることが裏づけられています。
社会保障という言葉がでてくると、負担やむなしとか、あるいは西欧型の「高負担・高福祉」を思い描く人もあるようです。しかし、社会保障をどう支えていくか、財源をどこに求めていくか、それはいうまでもなく、税をどこに配分するのか、税をどこからとるのかという問いと不可分の問題です。
いま、はっきりさせる必要があるのは、消費税を増税しなくても財源はあるということでしょう。
大資産家について上記でふれていませんが、大企業・大資産家の減税を元に戻せば、7兆円の税収が可能です。そのほか大企業向けの優遇税制をただせば、さらに3兆円が可能ともいわれています。
軍事費についてはどうでしょう。思いやり予算をふくめて米軍のために莫大な税金がつかわれています。これらをあらためればさらに少なくない財源が確保できます。公共事業費は削減されてきているとはいえ、西欧に比べると格段に使われています。フランス並みにすれば12兆円の財源が確保できます。
ようは、これらを聖域にしないことです。
是非をしっかり議論し、削るものは削るという立場に立てば財源は生まれます。
その意味で、税金のとり方も、使い方も根本から問う国民的な議論が求められているのではないでしょうか。
とりあえずは総選挙を、そのための一つの機会にしなければなりません。
(「世相を拾う」08225)
追記;図表は、国民大運動実行委員会作成のリーフレットから。