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オバマ当選に思う

次期米大統領選でバラク・オバマが勝利した。
オバマ当選そのこと自体に特別の感想を私はもっていないが、彼の勝利には、ブッシュの政治からの転換を願う米国民の願いが、そして建国以来の差別的立場に置かれてきた黒人の期待が込められていたことを誰も否定しえないだろう。

私はそれを前提に、わが日本国にひきつけて考えてみたい。この場合、米大統領選後、日米関係をどのように位置づけていくのか、この点がわが国に少なからず影響を与えると考えるからだ。

たとえばオバマ日米安保条約を破棄する。こんなことがあれば、日本の支配層はむろん動転するだろうが、話はそれにとどまらない。
なぜなら、現在の日米の関係は、今日、しばしば日米同盟という名で表現されている。日米安保条約に象徴される日米関係は、米国が政治においても、経済においても主であり、日本が従であることを旨としているからであって、そうなれば、日本の政治・社会的構造を確実に揺るがすからである。 それほどに日本の政治・経済構造は米国(の態度)に依存しているということだ。

それはこんな事象に表れている。
軍事費は、米国の肩代わり的側面が年々、強まっている。思いやり予算だけでなく、米軍再編・移転費用すら負担しているではないか。
そして、たとえば、年末近くになると毎年、日本につきつけられる年次改革要望書を一読すれば、両者の関係がいかなるものか、たちどころに判読できるだろう。

軍事的にも、政治的にも、経済的にも米国いいなりの日本の姿勢がこれらに表現されている。ひるがえれば、この従属の関係がすなわち日本のゆがみにもなっているということだ。
日本国の首相が、ことあるごとに米国の顔をうかがいながら、ことを進めていることを私たちは幾度となく経験させられてきた。われわれが目で見、耳で聞く限られた情報ですら、日米の関係のあり方が色濃くにじみでているということだ。こんな日米の関係を一変してほしい。こう願いたいものだが、それは残念ながら、少なくともすぐには叶いそうにない。

別のエントリーですでに、オバマジョセフ・ナイをブレインとしていることを引き合いにだし、以下のようにのべた(参照;新テロ法延長の意味・または・民主党の動揺)。

マケイン・共和党タカ派オバマ民主党ハト派などと単純化してしまうと、日本にとっても、世界にとっても禍根を残すことになりかねません。私はどちらがなっても、ほとんど変わることはないだろうと予測しますが。
むしろ民主党共和党と比較して、同盟国により負担を求める傾向が強いと説く識者もいるくらいです。
その上で、注目すべきはジョセフ・ナイオバマのブレインに入っていることです。忘れもしませんが、ナイは、新ガイドラインをつくった人物。いっそう日本への要求、米国の肩代わりを求める圧力は強まると推測するのです。

こうのべたのだが、米国の肩代わりを求める圧力は強まるという私の見立てがどうかは横におくとして、閣僚の組織に着手しはじめたといわれるオバマはだが、「ゲーツ現長官(65)が留任する可能性が指摘されている」という観測もある(参照)。そうなると、いよいよブッシュの対東アジア戦略を引き継ぐことになるだろうし、日本にたいする米側の基本的な姿勢が変わる可能性は少ない。ほとんどない。

新しい大統領の誕生で、米国の政界戦略がどのようになるのか、日米の関係がそれにともないどうなるのか、そこでの大転換を率直に期待したいものだが、それを上回る負の条件が現状では整っているように思えてならない。
むしろわが日本国がこれまでの日米関係をいったん白紙に戻し、ほんとうの意味での対等平等の友好条約を締結するよう申し出ることが重要なのであるのだが。
しかし、これは、「政権交代」があろうとなかろうと、まったく望み薄なのも確かである。
(「世相を拾う」08226)