世相を拾う(10月31日)

「給付金2兆円」全世帯に 追加経済対策、首相が30日夕発表へ

麻生太郎首相が30日夕に発表する、米国発の金融危機による実体経済への影響を抑えるための追加経済対策の全容が明らかになった。総額2兆円規模の「給付金」の全世帯への支給など内需拡大策や金融機関の保有株式買い取りなどの金融市場安定化策を打ち出す。確定拠出年金(日本版401k)に企業が拠出する掛け金に従業員が上乗せして資金を出す制度の導入など株式市場の活性化策も盛り込む。

国の直接的な財政支出は5兆円規模を軸に調整しているが、事業規模とともに首相が判断する。

政府が追加経済対策の目玉としていた定額減税だが、結局、給付金方式で実施するようだ。しかし、前評判は芳しくない。「日経」(10・30)は、「減税と経済効果に変わりはなく、国内総生産(CDP)押し上げ効果も乏しい」と指摘する声をとりあげている。実は今回も公明党の強い圧力によっている。この党は、この種の「現物給付」がよほど好きらしい。今回もというのも前例があるからだ。その前例の1998年の地域振興券がそうであったように、先の指摘のとおり、消費刺激効果は期待できない。

「日経」によれば、地域振興券(総額7000億円)の効果分析では、実質的に増えた所得2万円のうち実際に消費に回ったのは2−3割に当たる4000−6000円程度で、残りは貯蓄に回ったという。「振興券を配った月は消費が増えるが、翌月以降は逆に前月の買いだめの影響で消費が減る」というのだ。最終的な消費押し上げ効果は通常に比べ1割にすぎなかった」という結論だ。

「日経」にまつまでもなく、効果薄であると、多くの人がそう思っている。しかし、与党がここまで目玉としてもちあげるのは、もちろん選挙対策ということなのだが、それだけではない。
一方の民主党。これを、ばらまきと批判する。けれど、同党の批判もここまで、これ以上のものではない。
大事なところを欠いている。
追加経済対策もまた、大銀行優遇なのである。自公はこの点から目をそらすために、あえてこの効果なしの「給付金」を大々的に宣伝する。民主党の批判はこの点で画竜点睛を欠くということになる。

考えておいてよいのは、定額減税に喜んではいられないということだ。そもそも与党が恒久的措置としてとったはずの定率減税を、徐々に弱体化させ、ついには廃止した。そのかわりの定額減税なのだし、一度きりのもの。一年たてば実質的な増税を味わうことになる。

数日前のエントリーで、この12年間に銀行への公的資金は資本注入だけで計12兆4000億円も注入されていることをとりあげた。しかも、この間、大銀行はほとんど税金を払っていないのだから。それでも、危機打開の根幹が、大銀行救済に置かれていて、それを覆い隠すかのように設定された給付金。

首相、3年後消費税率上げを明言 解散は当面見送り

その上に、政府は、増税を隠そうもしていないことをしっかり受け止めておく必要があるだろう。いっそうの大企業奉仕のためである。ならば、民主党はどんな対案を提出できるのか。大企業への課税強化を抜きにそれは可能なのだろうか。
(「世相を拾う」08220)