公的資金投入は誰を助ける


世界を揺るがしている金融危機を「一世紀に一度の危機」といったのはグリーンスパンFRB前議長だが、事態は、その指摘があながち大げさとはいえないもののようにも思える。
本日のテレビ番組では、米下院政府改革委員会での公聴会のもようを伝えていた。その中で同氏は、議長時代に「過ちを犯した」と、サブプライムローン問題に端を発した金融危機に関連して、融資監督上の誤りを認めていた。要するに、氏の発言は、金融機関側にとって、規制よりも利益追求が株主や株式資本を保護をすると考えたことが誤りだったというものだ。

グリーンスパンの想像を超えて、深化した危機。信用度の低い高金利型住宅ローンを証券化し、金融商品として売り出す。そこに世界中の投資家たちが群がる。
返済能力のない者にどんどん貸し出し、その債権を売買自由な証券にかえ売りさばくのだから、このシステムそのものがギャンブルじみている。

100年に一度の危機は、こんな形で日本にも波紋をよんでいる。
24日の東京市場円高・株安が急速にすすみ、円相場は一時1ドル=94.75円と13年ぶりの高値をつけた。金融危機を背景にして、景気の先行き懸念がいちだんと強まったためだ。急激な円高をうけ、東京株式市場は一部上場銘柄の9割が値を下げ、平均株価は8000円を割った。

すでに米国は70兆円を超える公的資金の投入を決めた。日本では、金融機関への公的資金の投入を可能にする新金融機能強化法案を24日閣議決定し、政府は国会に提出した。法案は、今年期限切れになった旧法を4年延長するものだが、報道によれば、資本投入を活用する金融機関の枠の拡大、資本投入の条件緩和などが変更点とされている。また、最終的な損失がでた場合、血税で穴埋めする。

けれど、公的資金の投入ははたしてどんな役割を果たしているのか。衆院財務金融委員会佐々木憲昭議員が明らかにした(参照)。
氏によれば、銀行から中小企業への貸し出しが、96年3月時点は約263兆円だったのに、今年8月には179兆円に減っている。この12年間に銀行への公的資金は資本注入だけで計12兆4000億円も注入されている一方での、中小企業への貸し渋り貸しはがしの実態が浮き彫りにされたといえる。銀行はまともな役割を果たしていない。
だから、深刻な中小企業の資金繰りに手を差し伸べることが今求められているのだが、公的資金の投入は役にたたないことが実績で示されているわけだ。むしろ公的資金は、本来何の責任もない国民の税金を使って、金融機関の責任を免罪するようなものだ。

国民にむかっては自己責任をあれほど強調する政府だが、大銀行になると、こんな免罪も厭わないのだから、大企業・大資本優遇は極まっているといわざるをえない。
公的資金投入はいったい誰を助けるのか。
(「世相を拾う」08216)