教育には金を出さない。。


一週間ほど前のものだけれど、日本の教育費にふれた記事があった。

【教育動向】家計負担が重い日本の教育費

なかなか経済が上向きにならないなか、お子さんの教育費をどうねん出するかで、日頃頭を悩ませているご家庭も少なくないと思います。しかし、そもそも日本は、先進国の中でも教育費について家計負担の重い部類に入っているのです。経済協力開発機構OECD)がこのほど発表した『図表でみる教育OECDインディケータ(2008年版)』という報告で、そうした実態が改めて浮き彫りになっています。

報告は2005(平成17)年段階でのOECD加盟国各国のデータを比較したものです。全教育機関に対する支出の状況を見ると、国や地方自治体などによる公財政の割合は加盟国平均で85.5%ですが、日本は68.6%と、比較できる26カ国中24位という低さでした。ちなみに25位は米国、26位は韓国です。


高等教育を例に、詳しく見て見ましょう。日本の場合、公財政支出の割合は33.7%(加盟国平均73.1%)という低さです。それ以外の「私費」は 66.3%(同26.9%)で、とりわけ家計負担の割合が53.4%と半数を超えています。つまり、高校まではともかく、それ以上の学校へ進むには、先進国の中でも最も家計負担の重い国の一つなのです。

この理由として最も大きいのは、教育に対する公財政支出が少ないことです。国内総生産(GDP)に対する公財政支出の割合は3.4%(同5.0%)で、ギリシャにも抜かれて、比較できる28カ国のうちで最下位になってしまいました。実は経済規模に比して、教育に最もお金をかけていない国だ、というわけです。

日本の公的財政支出が最低という数字をみせつけられて衝撃をあらためて受ける人もいるだろう。公的支出の低さは、高校授業料の無償制度をとっている国がOECD加盟30カ国中26カ国あるのにたいして、無償でないのは、日本、韓国、ポルトガル、イタリアの4カ国という数字にも表れている。
大学で無償なのは14カ国、その他も多くは少額、返済のいらない給付制の奨学金を整備している。一方の日本。奨学金は7割が有利子(*1)だといわれている。昨年12月には、民間ローンにするため利率を引き上げ、もうけ口にしようと閣議決定されている。


教育貧困国ニッポン −格差拡大もたらす


無償化が世界の流れだということを、上記エントリーでのべたが、日本は、無償制の導入を提言した国際人権規約に留保の態度をとっていて、同じ立場をとるのはマダガスカルルワンダしかない。しかも、国際人権規約は40年以上も前に批准されたものだ。

高い学費、卒業しても多額の借金返済がまっている。受益者負担、自己責任の名のもとに異常な日本の教育環境はつくられてきた。日本の高学費は日本を確実に衰退させている。将来の社会の担い手たる若い世代の育成には、社会的責任が必要である。

【関連記事】
家計を圧迫する教育費  (世界の片隅でニュースを読む)

追記;橋下大阪府知事が私学助成の600億円削減を言い出したのは周知のとおりです。
     
http://sankei.jp.msn.com/politics/local/080209/lcl0802090116002-n1.htm
また、かつて私学助成については、石原都知事が、全国都道府県知事会議で「私学助成という、どう考えても憲法違反の制度がとられている」(毎日新聞)などと発言してきました(1999年)。上記のエントリーで、三浦朱門の「魚屋の息子が官僚になるようなことがあれば不幸になる」というあからさまな「階級差別」的発言を問題にしましたが、教育をすべての人に開放する視点を欠落させているという点で、橋下、石原にも三浦と気脈を通じる思想があるのではないでしょうか。

石原の発言は、「公金その他の公の財産は…公の支配に属しない慈善、教育…に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」(憲法89条)という規定に違反しているというものです。これは、公教育の大きな部分を占める私学の役割にあえて目をつぶる一方で、私的な教育などにたいする公権力の干渉を排除し、公共の利益に反する事業に公金を支出しないという89条の主旨をねじまげたものとしか私にはうつりません。