志位質問と迷走する「朝日」、民主党


新自由主義的政策の旗を振り、二大政党政治推進の立場を明示的にとってきた朝日新聞
福田前首相が前任者につづき政権を放り投げ、麻生政権が誕生するという、どこからみても自民党の長期政権のゆきづまりが露呈するに至って、自民か民主かという構図を強調してきたのも朝日であった。その論調は、総選挙目前という状況をも自ら仕立てあげ、そして「政権選択選挙」などとあおり、世論を誘導しようとする念の入れようだった。

だから、たとえば、貧困が広がり、まさに社会の格差が極まるような今日の日本国にあって、そこから抜け出そうとする青年とそれを支援しようとする動きがあっても、あえて視野に入れず報道すらしていない。「毎日」がとりあげたことをもってすれば、その態度、報道姿勢は対照的であろう。
こんな朝日の異常さを、このブログでは、明確に指摘している。

それだけではない。
7日の予算委員会での共産党・志位委員長の、キヤノントヨタを名指しし、首切り、労働者使い捨てと違法派遣を告発した質問(参照)には、朝日は沈黙してしまった。
朝日にとっては、この質問より、小沢党首の入院が関心事らしい。
もっとも志位質問は知る限り他紙もとりあげておらず、広告収入に依存し、大企業にからめとられている今日のジャーナリズムの深刻さをそのまま表現しているようなものだ。
同質問は、同じ志位氏の、反響をよんだ2月の質問につづき、大企業の横暴と勝手を鋭く衝き、ただす内容だと私には思える。こんな質問は、民主党には絶対にできない。違法行為であっても、それが大企業のものであれば、たちまち口をつぐまざるをえない。いわゆる連合に支えられていようとも、大企業の首切りを告発することなど、到底できない。

質問は、偽装請負を告発した労働者にかかわっている。日亜化学キヤノンを告発した労働者への首切りの不当性を指摘するというのだから、質問者が共産党であろうとなかろうと、憲法を守り、思想信条の自由を尊ぶのならば、反対すべきものだろう。断固たる措置をとるようただされて、麻生首相は「極めて不当」と答弁せざるをえなかったのだ。

つまり、政治全体からみれば、単に一つの局面にすぎない、国会質問をあえてとりあげるのは、世間でさけばれる「政権交代」うんぬんの虚像とは別のところで、政治を動かそうとする力と、それに対抗しようとする力が対峙的に働いているということである。この質問に、自民VS民主などという虚構の対決ではなく、あえていえば、共産党と自民・民主のちがいが明確に描かれているように思う。

つけ加えれば、「政権交代」を唱え早期解散をさけぶ勢力からすれば、当初の目算がはずれ出したといえようが、国会内の状況は、いよいよ複雑の度を極めている。自民の「老獪な国会運営」のなかで、民主党は迷走しはじめている。
新テロ法案の扱いをめぐってもそうだ。

さすがに、朝日もこればかりは擁護できないようである。
つぎのように社説で、いちおうは民主党の道理のなさを指摘している。

給油法案―駆け込み審議の異様さ

世間の反発が強かったことの表れだろうが、鳩山幹事長は昨日、つぎのように「路線変更」を表明した。

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081011k0000m010049000c.html

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2008101102000127.html

ばかばかしい限り。今さら何をいうのか。欺瞞に満ちている。街頭で、鳩山氏はこんな同党の「路線変更」を伝えることが果たしてできるのか。
民主党は迷走している。
同じように、朝日もまた迷走する今日である。
(「世相を拾う」08201)



追記;リンク切れの場合は、以下。
給油法案―駆け込み審議の異様さ
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20081011k0000m010049000c.html