金融危機で日本の政治のあり方が問われている。


金融危機と混乱は、10月に入ってニューヨーク市場株価がついに4年ぶりに1万ドルを下回り、東京市場では、1万円割れを記録するなど、新しい局面に入ったようです。

ふりかえると、リーマン・ブラザーズにつづくAIGの破産という事態に直面し、米政府が提案した金融安定化法が成立したのは10月3日のことでした。米国内ではしかし、同法にたいする米国民の批判は根強く、今後の金融機関の損失拡大は必至とされていて、混乱が収まる気配は少しも感じられません。


動揺収まらぬ市場、伝えられる報道によるかぎり、こんな状況でしょうか。
こうしたなか、ブッシュ大統領は11日、G7財務相らとの会議のあと、「米国は危機克服へのあらゆる利用可能な手段を取る」と声明で発表しました。彼の言葉でいえば、事態は「地球的規模」での対応が求められるものであって、したがって、いっそうの政策協調を明確に先進諸国に求めたメッセージであったということです。
つまり、先に新しい局面といいましたが、その第一の特徴は、今日の事態が米国発のカジノ資本主義の破綻を示したもので、その限りで、これは「資本主義の限界」をも示すものといえなくもないわけです。

大げさにいえば、体制の危機ともいえる事態。米国発の危機は、世界に飛び火し、むろん日本を素通りしていくわけではなく、日本経済にも深刻な影を落とし始めています。

トヨタ九州、派遣社員をリストラ


7日に発表した連結決算で業績悪化が明確になったトヨタ自動車。今年になって深刻化した北米などでの販売不振を受けて、グループ企業では非正社員を削減する動きが出てきた。トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)は派遣社員約800人の契約解除という異例のリストラも実施。今後、下請けメーカーも含め人員削減が増える可能性がある。

 トヨタ九州は、主に米国向けに高級車「レクサス」を生産しており、販売不振の影響を大きく受けた。派遣社員は6月に約350人、8月に約450人を契約解除した。平成21年3月期の生産台数が前年比1割減となることが響いた。

 「センチュリー」や「クラウン」などの高級車を生産する関東自動車工業の東富士工場(静岡県裾野市)でも派遣社員の一部を契約解除。人数は今年4月の約200人から8月には約100人に半減した。

資本の論理とはこういうものでしょうか。
世界規模で金融危機が起こり、実体経済にもその影響が及ぶ。その際、庶民に犠牲を転嫁しようとするのか、それとも逆に、国民の暮らしを守る立場に立つのか、これが問われるわけですが、日本の大企業は前者の道をとるようです。
減産に入っているトヨタは、まず派遣労働者、期間社員を切るというわけです。今日の日本社会を象徴する労働者を使い捨てにする、端的な表現がこの記事には示されています。

労働者への首切り以外にも、考えられるのは、中小企業、下請けにたいする単価切り下げでしょう。同時に、大手銀行は、決算結果にみられるような膨大な利益をあげていながら、中小企業への貸し渋りは強行しようとするのが当然、推測されます。

私たちが今、考えてみてもよいのは、大企業はかつてのバブル時の数倍の利益をあげていて、たとえばトヨタは14兆円もの資産を留保しているといわれています。そうした一部への極端な富の集中をあらため、ためこんだ利益をはきださせ、企業の社会的責任をこの際、果たさせる社会的努力が求められているのではないでしょうか。少なくとも社会保障、税金の面で厳しくその責任を問うことがいつにもまして必要なように私には思えます。

少なくとも各政党には、政治の責任として国民への犠牲転嫁を許さず、応分の負担を大企業に求める強い姿勢が求められると私は考えます。

少し寄り道をしましたが、新局面の第二の特徴は、結局のところ、資産証券化商品や金融市場への公的管理を強めざるをえない事態に至り、従来の市場自由化原理が破綻したことを意味しているということでしょう。
いうまでもなく、今日の事態は、FRB米連邦準備制度理事会をはじめ、米金融社会と組織の相対的な弱体化、そしてドルの機軸通貨の機能低下をしめすものでもあるといえる。
こんな流れのなかで、国際的な金融再編がいちだんと加速されることが当然、予測されています。

考えてみると、今回の金融危機と混乱は、サブプライムローンを発端とする住宅市場崩壊にもとづく米経済の破綻に最大の要因としたものでした。

日銀の生活意識調査では、81%が「景気は悪くなった」と回答しています。また、内閣府調査では、つぎのような結果がでています。

内閣府は1日、物価上昇に関する国民生活モニター調査の結果を発表した。食料品や石油製品などの値上げが「家計が影響を受けている」と回答した人が99.2%に達した。内訳は「かなり影響を受けている」が47.0%、「ある程度影響を受けている」が42.4%、「どちらかと言えば影響を受けている」が9.8%だった。

 世帯年収別にみると、1000万円未満の世帯では、9割前後が「影響を受けている」と答えた。値上げに対する生活防衛で通常より購入や利用を控えているものは、外食が67.8%で最も高く、次いでガソリンなど自動車等維持費(52.4%)、菓子類(48.5%)、国内旅行(46.8%)だった。

http://mainichi.jp/life/money/news/20081002k0000m020103000c.html

このような国民の生活不安とは裏腹に、さきにふれたようにトヨタキヤノンなど大企業は過去最高の利益をあげています。しかも、国際的競争力の強化こそが最大の課題とばかり、国民、労働者からの収奪をつづけ、それを支援してきたのが自公政権でした。

今日の世界的な危機にあたって思うのは、労働者には非人間的な扱いで法外な利益をため込みながら、社会保障などの負担増、増税に加え物価高という三重苦を強いている今日の政治のあり方を根本から問える政治こそが求められている、そう強く思うのです。
(「世相を拾う」08202)