補正予算案は賛成できるシロモノか。


カイサン。
この言葉に取り憑かれたかのような、あっけない結末ではないでしょうか。もっとも、国会最終盤で同じような、腰砕けとも思えるような妥協を、私たちはくりかえし見せつけられてきたのですけれど。


http://www.asahi.com/politics/update/1009/TKY200810090121.html

衆院テロ対策特別委員会は9日の理事会で、インド洋での給油活動を1年間延長する補給支援特別措置法改正案について、10日の同委で趣旨説明を行い、17、20両日に審議することで合意した。採決の日程は審議経過をみて改めて協議するが、20日中にも委員会採決される見通しだ。

 民主党は改正案に反対しているが、総選挙を迫る立場から早期の審議、採決は容認する姿勢を示している。衆院通過後、参院では野党の反対多数で否決されるが、与党は衆院の3分の2の多数で再可決する構えだ。


民主党は改正案に反対しているが、総選挙を迫る立場から早期の審議、採決は容認する姿勢を示している

と書くあたりに、民主党に寄りかかった朝日の姿勢を感じてしまいます。

つぎのように指摘するのは「赤旗」です。

与党が九日の衆院本会議で審議入りを求めていた、自衛隊によるインド洋での給油活動を延長するための新テロ特措法改定案について、八日、民主党が採決を容認する姿勢に転換しました。八日の衆院議院運営委員会理事会は、本会議での質疑を省略し、テロ特別委員会で直接、審議入りすることを決めました。また、衆院本会議は同日、政府提出の補正予算案を採決し、自民、公明、民主、国民新の各党の賛成で可決、参院に送付されました。日本共産党社民党は反対しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-10-09/2008100901_01_0.html


私は、この記事の「採決を容認する姿勢に転換」という点こそ重要だと思うのです。朝日の記事は、この局面での変わり身を少しも表現していない、もっとも重要な観点をすっぽりと欠落させている。
あえていえば、民主党は、新テロ特措法改定案に反対の意思を貫けるのか、そこに疑問さえ感じるわけです。審議に入れば、民主党内の態度が分かれる可能性をはらんでいるからか、選挙前に党内亀裂を生むのは得策ではないという判断が一方にあるのでしょう。ですから、大方が一致する「政権交代」を実現するために、早期に解散をめざすという党略が働いているといわざるをえないでしょう。

そんなことでよいのか。
この新テロ特措法改定案にしても、審議を尽くして争点をはっきりさせ、国民の審判を仰ぐのが政党の役割ではないでしょうか。仮に対決点があるのなら、むしろ自民党とのちがいをはっきり有権者に知らしめておいたほうが民主党への支持もえられようというものでは。

http://www.asahi.com/politics/update/1008/TKY200810080292.html

08年度補正予算案は8日の衆院本会議で、自民、公明ほか、民主、国民新各党の賛成多数で可決、参院に送られた。共産、社民両党は反対した。民主党は早期解散を麻生首相に促すため、参院でも審議引き延ばしはしない方針。このため、補正予算案は来週内にも成立する見通しだ。

朝日の記事です。
自民党補正予算案は、これ以上の不安を引き受けられない国民にとっては、それがふれこみどおりの「生活者の不安解消のため」のものだとすれば、期待がいやがおうでも高まるでしょう。けれど、その期待とはうらはらに、重大な問題がふくまれています。

一点だけあげると、後期高齢者医療制度は、手直しを重ねてとりつくろっていますが、いよいよ制度設計の誤りが露呈し、いったんは廃止の方向すら匂わせざるをえなかったほどです。しかし、態度をかえ、補正予算案では、制度の存続を前提にしているのです。いくらかの小手先の対応はふくまれていますが。
民主党はしかし、先の国会では、ほかの野党と共同で廃止法案を提出したではありませんか。補正予算案に賛成するのは、この点でもつじつまがあいません。いったいこの補正によって自ら廃止を主張してきた立場を説明できるのでしょうか。それとも、後期高齢者医療制度に賛成するのでしょうか。

民主党は、こうした自らの立場をかえるのか、かえないのか、それすら有権者に明らかにせず、ただ解散、「政権交代」を唱えているにすぎません。

争点をはっきりさせよ、そして選挙に臨め、民主党に求めるのはこの点です。