「政権交代」― 中身が透けてみえてくる。


政権交代」のためなら、審議しないで補正予算案にも賛成。解散を一刻も早くと考えているのでしょうが、民主党の対応はなりふりかまわないようにみえます。今の政権とどこがちがうのか、疑念がしだいに現実のものになりつつあるのでは。

「朝日」の欺瞞 −どこに対立軸があるのか。

まるで斥力でもって物を両極に反発させるかのように、今日の日本では、富と貧困が広がってしまった。この要因は、資本による労働環境の転換、たとえば典型から非典型への置き換え、派遣労働の強化と、国家的、制度的な所得再分配の見直しにあるといってよい。
庶民は、ようするにこの構図のなかで収奪のえじきにされてきたのだ。

こんな貧困と格差を強いてきた日本の社会に反対するのなら、その大元を絶て、というのが当ブログの主張にほかならない。
分かりやすくいえば、資本、財界・大企業はどんな事態においても、その時々で最大の利益確保を追及するという習性なのだから、経済のグローバル化が叫ばれる時代にあっても、国際競争力を強化しなければならないといううたい文句でもって、労働者に犠牲転嫁し、自らの負担を極小化する手段をこうじて、つまり税と社会保障費用の負担などを極力少なくするという圧力を政府にかけ、目的を達成してきたといえるのではないか。
富は、したがって財界・大企業を一つの極にして集中し、一方の労働者のほとんどは、所得分布を仮に一つの線分に表そうとしたら、その差異がほとんど意味をもたないほどのその大勢という区分のなかに押し込められ、くくられてしまったといえるだろう。その結果、年収200万円に満たない人が1000万人を超えるという事象をもはらむ今日の日本社会という時点にわれわれは立っている。

こう考えると、今日の貧困と富の広がりを是正しなければならないという人ならば、まずこの広がりを生んできた要因を断つことが必要だと考えるのが充当というものだろうに。
けれど、日本社会の言論界はそう単純ではない。たとえば新聞。
あえていうが、社会の公器という名で、その存在を知らしめてきたであろうマスメディア、なかでも新聞の今日は、私からすればかつてない惨状にあるとさえ思える。その要因だと考えるのは、新聞経営の多くを広告収入に依存する現状にある。新聞は、経済的にすでに財界・大企業に抑えられ、支配されていると考えてよい。読売ならずとも。

ここ10年前後の、資本による労働環境の転換、たとえば典型から非典型への置き換え、派遣労働の強化と、国家的、制度的な所得再分配の見直し仁象徴されるような新自由主義的諸施策の深化は、二大政党政治という政治的枠組みと軌を一にしている。つまり、1994年以来の小選挙区制の確立とともに事実上、自民、民主の二大政党政治が維持されてきたといってよい。税制上は、消費税導入が1988年であって、ほぼ同時期であることに注目する必要がある。


元に戻る。
メディアの惨状に言及したが、総選挙にむけて自民、民主の鞘当が目にし、耳にするところ激しさを増しているようだけれど、「朝日」はこれを煽っている。たとえば、以下の社説。

代表質問―対立軸が浮かんできた

率直にいえば、朝日の目は確かかと思わざるを得ない。
たしかに麻生と小沢の施政方針演説と代表質問は、ポレミカルといえばそうだったが、論点が切り結んでいたのか、はなはだ疑問ではないか。二つの演説に、争点が明確にあるという人がいれば、それを示してほしいものだ。非難の応酬ではあったが、では両者にちがいがあったかといえば、そうではない。財源を問題にしても、このエントリーの論脈からすると税は大企業・財界からとれという明確な主張であってよいと考えるのだけれど、そこは両者とも外している。つまり、聖域にしているという点で両者は同じだ。そこにこそ、今日の貧困、格差を生じせしめる一因があるというのに。

たとえば、派遣横行社会ともいえるほど、今日の日本では派遣という名のルールなき労働環境がはびこっている。今日の事態は1999年の労働者派遣法の改悪にあったわけで、自民党ばかりか民主党も賛成してきた経過がある。派遣の横行する今日をつくりあげた責任の一旦を民主党を負わねばならないのだ。

あれだけ労働者の告発がつづき国会でも追及された、経団連・御手洗氏のキヤノンの横暴を、ついに民主党は追及できなかった。

政権に近づこうとすればするほど、言行不一致が目立つようになるというのが、民主党の「政権交代」のはらむ矛盾ではないか。

「朝日」社説は、今日の貧困、格差の広がりを断つにはそれを生んできた要因、つまり財界・大企業の横暴とそれを支える社会的しくみをただすことに目をむけるのではなく、そこから国民の目をそらし、あたかも生死をかけた争いがそこにあるかのように二大政党の言動をもちあげてみせうものにほかならない。
どこに対立があるのか。財界・大企業の優遇税制に一言もふれないところに争点があるのか。消費税増税は、貧困と格差をさらに広めることにならないのか、こんな大事な点を抜きにした対立などがはたしてあるのか。

景気対策も、「無駄ゼロ、地方分権公務員制度改革道路特定財源一般財源化」などと叫んでも、今日の日本社会のゆがみをもたらしている「最大の聖域」にふれることさえしないという欺瞞に、「朝日」は浸りきっているというほかない。
(「世相を拾う」08197)