日本の中の民間軍事会社


民間軍事会社の日本での動向にふれた記事は、ほかに見当たらない。
この記事が伝えるのは、2つのことだろう。一つは、もちろん日本でも米国の軍事会社が行動しているという事実。いま一つは日米地位協定の壁があって、この会社の行為が法にふれる場合も日本で裁かれることはないということ。

米国の民間軍事会社航空自衛隊車力(しゃりき)基地(青森県つがる市)で、米軍の「ミサイル防衛」用レーダーの警備を請け負っていることが21日までに判明しました。民間軍事会社イラクで米軍の警備などを請け負い、市民を多数殺傷するなど大きな問題を引き起こしており、日本でもそのあり方が問われます。
Xバンドレーダーの警備を請け負っているのは「シェネガ・ブラックウォーター・ソリューションズ」社。国から説明を受けたつがる市によると、同社の要員は約60人にのぼります。
車力基地には昨年六月、在日米軍再編合意に基づき、弾道ミサイルを探知する「Xバンドレーダー」と呼ばれる「ミサイル防衛」用レーダーが配備されました。米軍準機関紙「星条旗」10月7日付によると、同レーダーを運用しているのは第九四陸軍防空・ミサイル防衛コマンドの分遣隊約百人です。このうち同分遣隊所属の米兵は2人だけ。残りは、米軍が委託・契約したシェネガ社と、もう一つの米民間会社「レイセオン」の要員で構成されています。
レイセオン社は、ミサイル防衛システムなど兵器の開発・生産を行っている軍需企業で、約40人がXバンドレーダーの操作にあたっています。
イラクでは、米大使館の警護などで米国務省と契約を結んでいる米民間軍事会社「ブラックウォーターUSA」の要員が市民を銃撃し、17人を殺害(9月)。イラク政府が同社の営業資格停止を表明し、米議会で公聴会が開かれるなど、民間軍事会社に対する批判の声が高まっています。
つがる市は、シェネガ社の要員らは「軍属」扱いになっていると説明。これら要員は、事件や事故を起こしても「公務中」であれば日本側に一次裁判権がないなど、在日米軍の特権を定めた日米地位協定が適用されることになります。「しんぶん赤旗」(11・22)


件の軍事会社は、この記事にあるように、市民にむけて発砲し殺害するなど無法も働くような会社(参照)。すでに日本は基地の島。これまでも在日米軍による無法がたびたび繰り返されてきた。その上に、米軍の委託とはいえ、軍事会社への民間委託によって引き起こされる問題を日本に持ち込むことになると、だれもが懸念するのではないか。

そこで考えるのは日米地位協定だ。米軍、米兵の行為が日本の法に抵触した場合であっても、日本においてはこれを裁くことはできない。米軍による事件・事故は、毎年約2000件も発生。政府が明らかにしているだけでも1952年以来、06年末までに、20万4500件(施政権返還以前の沖縄の分は含まれていない)にのぼる。被害にあった日本人死亡者は1080人に達している。無法の数々はこれまで、こうして見逃されてきた。どこまでも不平等な日米の関係。

今朝のNHKニュースでは、オーストラリアの総選挙のもようを伝えていたが、現ハワード首相率いる保守連立政権が苦戦を強いられているとのこと。野党側から、米国追従の姿勢を強く批判されているようだ。日本は、少なくともオーストラリアに負けぬぐらいの米国追従ぶりではないか。まさにいいなりといってよい。
福田政権は、新テロ法案を国会会期再延長してまで通そうと必死のようだが、たちどまって安保条約や日米地位協定、そして軍事の民間委託問題を今、考えてみるのがよい。冒頭の記事は、一つの地方の事実を伝えるにすぎないが、以上の意味で無視できないものだと思えてならない。