外国人労働者受容は何をもたらすか


日本に住む外国人は45年連続で過去最高を更新している。昨年末、その数は208万人(前年比3.8%)に達した。過去10年間で1.5倍の伸び。
けれど、外国人比率はヨーロッパのドイツ9%、フランス6%、イギリス4%と比べ、まだ低いのは歴然としている。
いま、労働人口の減少を補うため、外国人労働者の受け入れ拡大に政府も財界も着目する。

週刊東洋経済』がこの問題を扱った(6月23日号)。「高度技能者」とそれ以外とを区分して論じ、外国人受容がその後の日本社会にどんな変容をもたらすかについても言及していて、興味深い企画だ。
同誌によれば、経営者や国際業務、教育などを職業とする者を「高度技能者」としていて、それらの人びとと日本の地域社会の摩擦・軋轢は少ないとみているようだ。
一方で、以上に類しない、同誌の言葉を借りれば「3K労働に従事する単純労働者」の受け入れは、結果的に将来、日本人がより深刻な問題として直面するだろうとの見通し。

別のエントリー;「脱北者」家族漂着から;人の移動の問題で、移民労働者について言及してきましたが、結局のところ、外国人労働者の受け入れが、財界の思惑によって安価な労働力確保策として推進されようとしているところに目を向けざるをえない。

週刊東洋経済』誌が単純労働者としてあげる外国人の生活は、高度技能者の生活とはおよそほど遠いことは容易に想像されるわけだ。なかんずく、そもそも安価な労働人口を補給するために彼らの受容が考えられている以上、貧困で不安定な生活が待っているといえるだろう。何も外国人でなくてもわが国ではすでに子どもの非行化・いじめや、たとえば保険料未納による医療・福祉からの排除などが存在するわけで、彼ら外国人をそれらがよけていくわけでは決してない。
したがって、この点では同誌が懸念するのもよく理解できるものだ。

同誌は、一定の要件を満たすインド人IT技術者に3年の就労ビザを積極的に発行することを2000年、当時の森喜朗首相が約束したことを伝えています。この措置によって、日本で不足するIT技術者を確保しようとする財界の意図は隠しようのないものである。
他方、同誌のいう単純労働者も、現実には受け入れ拡大の傾向にある。愛知県のトヨタ下請け部品メーカーの実情が紹介されている。日系ブラジル・ペルー人の実情を伝えている。
90年に入管法改正で日系人にたいするビザが新設されたことにともない来日は本格化。日本が表向き外国人労働者の受け入れを認めていないにもかかわらず、「3K労働」には日本人労働者が集まらない事情も手伝って、労働力を提供してきたのはほかならぬ日系人用のビザをもつブラジル・ペルー人だったと指摘している。
彼らは、治安が悪く、職の少ない自国には帰ろうとしない、そして彼ら外国人労働者の日本への定住化が進んだというのが、『週刊東洋経済』誌の分析である。

経団連のとる方針は、紛うことなく国際競争力を高める上でも、国内生産のコストをどう抑えるのか、これを重要な課題の一つとする考えですから、労働人口低下を安価な外国人労働者で補うことは既定の路線といえるかもしれない。
しかし、私は、この路線に立てば、外国人労働者と日本社会との矛盾はいっこうに解消されていかないと考えるのである。日本人労働者の雇用環境と外国人労働者のそれとの解決の道は分かちがたく結びついている。そして、それを解決してこそ、はじめて国内での外国人労働者の雇用環境が整ったといえるし、日本社会での外国人(労働者)受容もはじめて可能になったといえるのではないか。



◇「花・髪切と思考の浮游空間」の記事の表記を一部あらため再掲した。