連立の矛盾。想定内のこと


「対等な立場」などという飾り文句で連立を決めたというのなら、それは、はなはだしい判断ミスといわざるをえません。
社民や国民新が、なぜ民主党との連立を考えるのか、その理由は何なのか、これまで不思議に思ってきました。むろん政策協定は結んだのですが、国民新とはともかく、社民と民主の間には個別の政策で高すぎる壁も存在するというのに。たしかに、これまでの「院内共闘」があったとしても、その必然性は少しも私には感じられませんでした。ようするに、あいまいな部分を残したまま連立を組むとこんな結果になりうるということでしょう。

社・国、政策関与に壁=「民主単独のよう」と不満

社民、国民新両党が、鳩山政権の政策決定の在り方に不満を募らせている。民主、社民、国民新3党の連立合意から1カ月がたったものの、民主党との「対等な立場」による協議の仕組みが一向に整わないからだ。巨大与党の中で政策決定にできるだけ関与し、存在感を高めたい両党だが、これに難色を示す民主党の「壁」は高く、手詰まり感も漂っている。
 「(党首級による)基本政策閣僚委員会の下にワーキングチームをつくったらどうか」。福島瑞穂少子化・消費者担当相(社民党党首)は9日、首相官邸で開かれた基本政策委で、菅直人副総理兼国家戦略担当相にこう提案。亀井静香金融・郵政改革担当相(国民新党代表)も「委員会に(両党の政調会長ら)スタッフを同席させてほしい」と要請した。
自民、公明両党の政権時代は、与党が法案などを事前審査することで政策決定に関与してきたが、政策決定の「内閣一元化」を目指す鳩山政権はこの慣例を廃止した。3党の政策調整のため新設された基本政策委だが、社・国両党には「(法案などの)仕上げの段階でなく、もっと早い段階から議論に加わることが必要」との不満がある。
社民党重野安正国民新党自見庄三郎両幹事長は7日、平野博文官房長官を訪ね、両党議員が加わった政策協議機関の新設や国家戦略室、行政刷新会議の正式メンバーに両党議員を加えるよう求めた。申し入れ文書には「(現状は)民主党単独政権であるかのようだ」との強い不満も盛り込んだ。
しかし、平野長官は「基本政策委を実効あらしめる方が大事だ」とほとんどゼロ回答。基本政策委への政調会長同席のみ前向きな姿勢を示すだけだった。民主党からは「基本政策委は福島さんや亀井さんをほえさせるための場だ」(幹部)との声も漏れる。3党連立とはいえ、社民、国民新両党と民主党の間にはすき間風が吹き始めている。

自民党がこれまで公明党を必要としてきた理由と、民主党があえて今回、社民、国民新と連立を組んだ理由は、おおげさにいえば、天と地ほどの差があるように私には思えます。

自民党公明党を吸収したのは、いうまでもなく自分の党の権勢の低下が著しかったからにほかなりません。自民党の支持基盤が長期的にみればもろく、弱くなってきたのは事実であって、単独政権の保持が不可能になった。こんな傾向のなかでの公明党頼みという筋道をとってきたのに対して、民主党があえて今回、社民、国民新と連立の政権を採った背景は外形的には大きく異なるでしょう。
支持率の低落が続く自民党と、少なくとも投票行動の対象として民主党が圧倒的に選ばれる今日とは事情がちがう。ただ、民主党が、弱小の社民、国民新を連立という「契り」で味方に取り込むのは、社民や国民新の支持層をも民主党支持に変えていこうとする明確な意思が、取り込もうとする意思が、同時に存在するだとろうと私は思っています。来年の参院選は、その意味でも重要です。

結局、この政権政党民主党は、端的にいえば、選挙制度見直しへの対応で明らかなように、定数削減、比例部分を削減するという一点に象徴されるような、二大政党へと民心が動くようなシステムを徹底して追求している。
民主党の絶対多数獲得こそ、目標です。常々、小沢が明らかにしてきたように単独政権をとれる基盤をつくり出すことこそ、ねらいです。

ですから、社民・国民新が不満をもらうような扱いは、当初から想定されるべき事態だといわざるをえません。社民・国民新の両党が、記事のように、はじめて疎外感を味わっているというのであれば、そもそも両党の連立の条件づくりのゆるさ、しっかりした条件をつくりえていないことを証明しています。
この点で、議員定数削減を強調している民主党にたいしては、社民、国民新は挙党体制をとり反対すべきなのですが。

民主党の当初の目標は、いわずもがな。絶対多数をとること、単独政権をめざすことにあるのですから。今の政治状況は、その過程の中での出来事とみておくことも必要です。
今回衆院選挙は、民主党の大勝という結果を導きだしたのですが、民主党の政策への共感が背景にあったからではありません。そのいわばねじれが、社民・国民新との連立政権をもたらしたのでしょうからね。
いまさら何の不満を。想定内のことだと、私は率直に思っていますが。
 
国会の中だけで事をすすめるとこの結果が導き出される。国会外の「闘争」を組織し、民主党を包囲するくらいのことは、連立を組んでいる社民は少なくとも考えるべきでは。国民が民主党を縛る条件をつくり出さなければなりません。