民主党マニフェストがなぜ変わるのか考えてみる


人間は思想で団結するのではなく、団結するとすれば、それは要求によってです。
こういうためには、そもそも団結するとは何かを定義づけなければなりませんが。それを今、堅くスクラムを組むだけの絆が存在することと仮にしておきましょう。
たとえば、労働組合も労働者としての権利保障で一致するわけです。そのほか様々ある団体の多くはそうでしょう。必ずそこになんらかの(実現すべき)要求がある。それでもって、気持ちを一つにしてスクラムが組めるのです。あえていえば個々の思想・信条を抜きにして。
前置きが長くなりました。
こんなことを考えるのは、民主党新政権の動向が頭にあるからです。
新政権がほとんどといってよいほど、少なくない有権者・国民が賛成しうるような政策を次々に打ち出している、この現実をどのように解釈すればよいのか、これを考えるからです。
直裁にいってしまえば、これは衆院選を経て、国民・有権者がつくり出した状況だといえるでしょう。現に当ブログもその反映だと繰り返しいってきました。

では、その際の政策の選択は何によるのかを私は考えるわけです。ここ数日は、長妻さんが10月実施は無理だといったとか報道されたように、母子加算の復活が話題になっています。母子加算がなぜ強調されるのか、です。あるいは、八ツ場ダムがなぜとりあげられるのか、ということです。

そこで話は冒頭に戻るのですが、このように民主党政権が国民の要求に寄り添った施策を打ち出す背景には、当然、それが国民・有権者の強い要求であることを民主党が認識しているということがなければなりません。強くもない要求に、いちいち応えるより、より強い要求に真摯に応えるのであれば、その存在意義はさらに高まるというものでしょうからね。

そうすると次に、民主党はその峻別をどのような手段で可能としているのか。これが問題にならざるをえません。
誰でも知っているように、民主党という政党は少しも組織性のある政党とはいいがたい。党員の塊があって、そこに党員の周りの有権者の要求が持ち込まれ、実現の方途をその塊で議論し、上にあげて民主党の政策の一つに掲げられるというシステムがおよそある政党ではないですね、民主党は。
だとすると、一つひとつの、今国民向けに強調されている政策はどこで取捨選択されてきたのか、その契機は何だったのか、そこに私の関心は移るのです。

結論は、おそらく、つまり推測の域を出るわけはないのですが、小沢地方行脚でしょう。政党の組織性の無さをカバーするために、いわゆるドブ板戦術でしょうか、小沢一郎は地方に徹底して出かけました。そうして、07年の参院選では生活重視を大々的に打ち出し、地方の支持を、むろん地方だけでなく都市部でも広げ、議席の大幅増を勝ち取った。そして、今回の衆院選も同様に。もちろんもう一つの側面として、自民党の自滅、自民党政治のゆきづまりをみないけいけませんが。それにたいする国民・有権者の強い反発があってのことだということは自明のことでしょう。

結局、考えられるのは、民主党という政党は、政党の組織を経由して国民・有権者の要求と結ぶのではなく、小沢行脚という手段でそれを代替しているということです。
逆にいえば、それだけ小沢一郎が選挙に長けているということもあるのでしょう。
しかし、その小沢も、参院選後、あとでふれるねじれの解消に動かざるをえなかったのです。つまり、それは、大連立だったのですが。

別のいいかたをすれば、民主党の中には右巻きねじの力と左巻きねじの力があって、今はそのうち左巻きの力が勝っているということでしょうか。左巻きねじの力というのは、国民・有権者に寄り添おうという力だと置き換えてください。私の見立てでは、左巻きねじ優勢の状況は、現時点では来年の参院選までは少なくとも続くだろうというものです。
ただし、同党は常にこの2つの力の拮抗を孕んでいるということです。ここが大事なところでしょう。つまり、どちらの方にねじを巻くのか、決める一つの要因はこの政党の場合、党外の国民・有権者の意識によるというわけでしょう。
だから、民主党に託すではもちろんなく、お願いするのでもなく、同党につきつけなければならないというのが、一つの結論です。

小沢一郎は、その意味で国民の要求がどこになるのか、もっとも敏感に感じ取った人物の一人かもしません。だからこそ、民主党マニフェストがくるくろと変わるわけですし、政権奪取後のある意味で驚くほどの施策の展開は、そのことを証明しているように思えます。

しかし、このような政局に敏な方策で限界があるのは、当の小沢自身が認識しているはずです。先にふれた大連立のその時点での失敗はそのことを物語っています。

今は左巻きねじ優勢の状況にあるのですが、それがいずれかは左右(巻きねじ)拮抗の状況、あるいはそれが逆転する状況が訪れるかもしれません。そして、保守勢力は少なからずいまの左巻きねじ優勢の状況を快く思ってはいないでしょうから、必ず巻き返しのときがくる。
そのとき、民主党はどうするのか、民主党政権が維持できるのか、その行方を少し私も考えてみようと思います。