最大の欺瞞− 民主党はなぜ議員定数削減を主張するのか。

最大の欺瞞とは、民主党があたかも国民の立場に立ちつつ、政権交代を主張していることと、この議員定数削減で同党のとる態度との落差にかかわっています。
渡辺治氏が、この議員定数削減のねらいを端的に、もちろん的確に衝いています。

比例定数削減の狙いは保守に大政党以外の少数政党をつぶし、純粋保守二大政党制を完成させることにあります。

これ以上の表現はないくらい、ピンポイントで急所をついていると私は思います。
ふりかえってみれば小選挙区制度の導入とからんで二大政党政治が制度として追求されてきたわけですが、その仕上げを、こんどは比例代表をなくすことでやってしまおうというわけですね。
国民の意識とはかけ離れて、小選挙区という1人をあらそう制度にしたて、今の政党でいえば自民か民主かを大宣伝し、まったく保守の枠組みの中の選挙制度にしてしまおうという魂胆です。

いまや日本政治を牛耳るのは財界・大企業。そして米国でしょう。
その枠組みをいわば永久保存してしまおうという計画とみてとってよいのではないでしょうか。これまで政権を握ってきた自民党はもちろん、政権交代を叫びながら、この2つ、つまり財界・大企業や米国にモノをいえない立場にあり、置かれているのが民主党ともいえましょう。たしかに、選挙戦の最中ですから、政策の一部で「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」という訳の分からない表現で、あたかも米国との関係を見直すかの印象を与えるのですが、よくお読みください。「方向で臨む」としか書いてないのですから。
こうした欺瞞的態度をみれば、あと何日で自エンドなどと狂騒曲を垂れ流す連中とは一線も、二線?も画して当然でしょう。無条件で民主党多数の政治を喜べない。

話を元にもどせば、渡辺氏は先のいわば結論から、具体的に政権交代後の政治の姿に言及しています。全面的に私は氏の分析に賛成します。今後、政治の行方は、消費税増税改憲の道をすすむだろうという予測です。

ただし、こうした保守二大政党制を追求する勢力が、なぜ今、比例代表部分をなくそうとするのか、その点で渡辺氏がふれているのは、選択肢がいよいよなくなってきているからだということです。制度ごと共産党などの議席を減らすようなしかけをとらざるをえないところに彼らが立たされているというものです。
いうまでもなく、たとえば小泉構造改革がいかに国民の生活に痛みを押し付ける結果になったのかは広く知られるようになっていて、それ自体、私は自民党政治のゆきづまりとよんできましたが、保守政治、限定すると構造改革路線の危機を表すものでしょう。
比例定数削減はこんな状況下での彼らの苦肉の策と表すことも可能でしょう。
渡辺氏はこの点を強調しているように思えます。

だから、単純に自民党政権さようならでは終われない。その次の政治をどのような形にするか、鋭く問われているということではないでしょうか。自民か民主かではまったくなく、二大政党なのか否かともいえる。
なぜ民主党議員定数削減を強く主張するのか、この点では、渡辺氏の解釈以上にうなずけるものに会ったためしは私はありません。
氏の解釈は正鵠を射ている、こう思います。
(「世相を拾う」09169)

追記:渡辺治氏の論評は、「消費税増税改憲への道」というタイトルで「しんぶん赤旗」(8・26)に掲載されています。