これも選挙対策


焦点を世襲というものに定めていくことにたいして過去の記事で異論をのべました(参照)。
世襲が意味をもつのは、現在の国会議員選挙でとられている小選挙区という制度と深く結びついているのは否めません。
民主党世襲制限をいい、世間に世襲にたいする一般的な批判が強いことから、自民党も一歩「踏み込んで」この記事のように対応するのでしょうが。けれど所詮は選挙対策。記事がそのことを語ってくれています。

民主党が次期衆院選からの導入を決め、進次郎氏への世襲も国会で攻撃する姿勢を強めようとしていたことから、前倒しすべきだと判断した。

2つのことがここで示されています。
世論の反発をこの対応でかき消そうとする判断、そして民主党とのこの点での論点を消そうとする判断、これが働いているのではないでしょうか。
それをいうのなら、世襲と今日では切り離せない選挙制度のあり方、小選挙区制度についてどうするのか、そこにふれてほしいものです。そこを横において、あたかも世襲がすべての悪因であるかのように一般化してしまうとそれは、まさに争点をはずすたくらみだと考えることもできる。
世論かわしの側面は、自民の中堅が語ったというつぎの言葉、「自民党中堅は「進次郎君は無所属で出た方がかえって選挙がやりやすい。どうせ当選後に自民党に入党するだろう」という見立てに象徴されています。つまり、外形的に批判を交わしうるものにした上で、実をとろうとするにすぎません。

こうして、外見をしつらえた上で、小選挙区制のもとでたとえ自民と民主が争って、どちらかの候補者が当選したとしても、それ自体で何かがわかるものではもちろんありません。
つきつめていえば、二代目であろうとなかろうと、その人物が自民党に籍を置いたり、あるいは自民党からではなく無所属で立候補をしたとしても、自民党民主党に置き換えてもよいのですが、その人物が何をのべ、何をしてきて、何をしようとするのか、そこを判断の基準にする、そうありたいものです。
そして、世襲によるゆがみをより強調する制度たる小選挙区有権者の意識と結果がともすれば大きく乖離するといわれるこの制度をこれからも続けるのかどうか、これも同時に問われなければならないと私は思うのです。

はたして、以下の記事で皆さんはどのような感想をもたれるのでしょうか。
ともあれ、菅氏の言動はまさに選挙対策以上でも以下でもない、欺瞞に満ちた匂いを私は感じざるをえません。

世襲制限、民主に対抗=小泉氏次男は無所属の公算−自民

自民党が国会議員の世襲制限を次期衆院選から導入する方向で検討に入ったのは、民主党世襲制限をマニフェスト政権公約)の柱に掲げる以上、改革姿勢をアピールするためには避けて通れないと判断したからだ。これに伴い、小泉純一郎元首相の次男進次郎氏の公認は見送られる公算だが、同氏は無所属で出馬し、当選後に追加公認される可能性がある。完全に世襲に歯止めを掛けることは事実上、困難だ。
 「自民党は体質を問われている。国民の目線からずれていると思われているのではないか」。自民党世襲制限導入の旗振り役、菅義偉選対副委員長は、同党衆院議員の3人に1人が、親などから「地盤、看板(知名度)、かばん(資金)」を引き継いだ世襲議員という現状に危機感を示してきた。
 もともと、菅氏は次々回の衆院選から世襲制限を導入する考えだった。しかし、民主党が次期衆院選からの導入を決め、進次郎氏への世襲も国会で攻撃する姿勢を強めようとしていたことから、前倒しすべきだと判断した。