政治は財界のものか− 今度は厚労省の分離方針

【麻生首相ぶら下がり詳報】厚労省分割「読売の渡辺さんが言い出した」

厚労省分割】
 −−昨日、与謝野馨財務相が会見で「麻生首相厚労省の分割について検討するよう指示した」と言った。このタイミングで指示した狙いを


 「正確じゃありませんね。厚労省の分割を指示したっていうことではないって思っています。少なくとも安心会議のなかで、われわれとしては、幼保一元化に限らず、いわゆる母子とか、若い人とか、子供の少子化とか、いろいろな話が、安心会議(安心社会実現会議)で、安心実現会議のなかで出ました。そのなかの多くから、この幼保の話が出たんだと思います」

「したがって、あのとき私が言った、確か、読売新聞の渡辺さん(渡辺恒雄読売新聞グループ本社会長)が最初にこの話を言い出したんだと記憶します。だから、厚生労働省を単に二つに分割するなんて次元は、やめたほうがいいんじゃないですかと。それよりむしろ、分け方としてはいろいろな考え方がありますんで、いわゆる少子化対策を抱えております内閣府のいろんな関係部局というものを、全部ひっくるめたところで、いろいろなことが考えるべきなのであって、単にあれを分割するというのはいかがなものでしょうかと。もう少し、今の時代に合ったようなものに考えた方がいいのではないか、という話をしました」

気になるのは、首相が一財界人の発言をこんな形であけすけに語るということです。
一つは、渡辺氏の発言が常に影響力を及ぼすということの一端をこれは示しているということをこれは示しているでしょう。その上で、二つ目に、この麻生発言は、自民党という政党がいかに財界人の言動に配慮し、その意味するところを政治に反映しようとしているのか、その一端をも示しているのではないかということです。
一般に、このように財界人の思うところを政治に、政策にいかそうと考えているのが自民党だと考えることができるわけです。

そもそも麻生首相が与謝野氏に指示したと伝えるニュースは以下のとおりでした。

厚労省分割、検討を指示=「変革へ決断の時期」−麻生首相

 麻生太郎首相は19日の経済財政諮問会議で、厚生労働省の分割について「仕事の切り分け、すなわち組織の分割案を出してほしい。今が決断の時期だ」と述べ、与謝野馨財務・金融・経済財政相に対し、具体的な検討に入るよう指示した。与謝野氏は直ちに分割案作成に着手する考えを表明。これにより、中央省庁再々編が具体的に動き出す可能性が出てきた。
 首相は諮問会議の席上、「今は大きな変革の時期。若者への支援を立て直すのも必要な時期に来ている」と指摘し、雇用問題や少子高齢化、子育て、新型インフルエンザ対応など所管が多岐に上る厚労省分割の必要性を強調した。一方、文部科学省厚労省で所管が分かれている幼稚園と保育所の一元化の検討も指示した。
 厚労省は2001年の省庁再編に伴い、厚生省と労働省が統合して発足した。首相は「単に2つに分割するのではなく、国民の安心を所管する省を強化する発想」を持っており、次期衆院選をにらみ、自らが掲げる「安心安全社会」の実現をアピールする狙いもあるとみられる。 
 与謝野経財相は会議後の記者会見で、甘利明行政改革担当相らと協議しながら具体案策定を進める考えを表明。ただ、6月に決定する「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2009」に盛り込む可能性については、「雷のように降りてきた指示なので、今考えている暇はない」と明言を避けた。
 厚労省の在り方をめぐっては、首相は15日の「安心社会実現会議」で、内閣府を含めた形で、医療や年金などを所管する「社会保障省」と、雇用や少子化対策を担当する「国民生活省」に分割、再編する案を提起していた。

そもそも政府の諮問機関のあり方や構成そのものに異論はあるのですが、国の行政機構を考える際、こうして諮問機関の構成員でもない人物の発言が重みをもって受けとめらる政治のあり方をやはり問う必要があるのでしょう。
厚労省もまた、10年ほど前の時期、省庁再編の名の下に、旧厚生省と同労働省を再編して生まれたわけですが、このように行政機構を左右する位置に財界がいる、そしてその財界の意向を軸に常に政治をおこなおうとしているのが自民党だということをしっかり受け止める必要があるのでしょう。
本来の行政は、国民にとってのものでしょうが、それとは関係なく、極端な場合はこのように特定の一財界人の考えが大いに影響しうるということを端的に示す今回のニュースなのでしょう。

つまり、自民党政治とは、国民にとっての行政のあり方はいかなるものかという観点はしばしば横に措かれ、財界がどう思うか、そこに政治の柱があるということです。国民生活とはいよいよ無縁なところで、省庁の統合も分離もおこなわれているということの証左です。
政治は、財界のものなのでしょうか。