憲法審査会をなぜ急ぐのか


自民、公明の与党は憲法記念日までの憲法審査会の設置をめざしているといわれています。2年前に成立した国民投票法ですが、その際、憲法審査会は形式的に設置されているものの、同審査会の規程がつくられておらず、同審査会は設置されていないに等しいものとなっているのです。国民投票法は3年間施行凍結なので、一年後にはこれが解除されることになります。

国民投票法が成立したとき、例のごとく民主党は揺らいでいました。が、結局、改憲にたいする国民の懸念も広がり、反対運動も活発化すると、民主党も対決姿勢を強めざるをえませんでした。しかし、今は、小沢氏が献金疑惑のただなかにあって、党内の結束が揺らいでいる時期。改憲論議を前面に押し出すことによって、民主党にくさびを打ち込もうとする自民党の意図が見え隠れしています。


憲法改正をめぐる国民世論は最近、連続して憲法改正反対派が賛成派を上回ってきていました。ところが、この3月には、読売が以下のように世論調査の結果を伝えています(参照)。

電子版をご覧ください。勝ち誇ったかのように伝えているのですが、ウェブ上では、別ページに調査結果が詳細に報告されています。それによれば、何のことはありません。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6100/koumoku/20090403.htm

依然、9条改憲に国民は明確に反対している。
それを、上の記事のように表現するのですから、にわかに信じてはならないのですね。
改憲派が目のかたきにしてきたのは、いうまでもなく9条です。安倍晋三は、「時代にそぐわない条文の典型は九条である」とまで公言してきたのですから。だとすれば、彼らが改変したい9条にたいして、国民がどんな態度をとっているのか、それに言及すべきでしょう。読売はこれについて一言も解説することなく、上記記事をまとめているのです。姑息な態度といわれてもしかたありません。
9条1項を改正する「必要なし」が77.5%、同2項も「必要なし」が50.9%と過半数を上回っています。つまり、9条にたいする国民の意思ははっきりしているのではないでしょうか。

国民の意思が9条改憲に反対している以上、今、さしあたって改憲の必要なしということです。
米国の意向を受け、海賊法案を契機に自衛隊の海外派兵と武器使用にたいして新たな道を開いて、違憲状態を政府は拡大している。これが現実でしょう。憲法に反する事態は、これだけではありません。昨年来、急速に拡大した派遣切りにみられる貧困の拡大。25条にてらしてみれば、だれもが少なくとも健康で文化的な生活を営む権利を有するのですから、そうではない事態に国民がすべり落ちたとき、ただちに救済されてしかるべきでしょう。
むしろ憲法の理念を現実政治に反映させることこそ、求められているのではないでしょうか。
(「世相を拾う」09087)