麻生流「民主主義のコスト」論

昨日、「政治とカネ」の問題をとりあげたら(参照)、と表現できるかのような、かみあった動きがあったようです。
まず小沢一郎氏。

公設秘書が起訴された今回の事件を踏まえ「全面的に禁止する以外にない」と改めて強調した。
民主党:小沢代表、企業・団体献金「即時全面禁止でいい」


正論です。実現のために全力で頑張ってほしいものです。すでに全面禁止に言及していたので、再び自らの主張をはっきりさせたということでしょう。だとすると、この立場からみて、過去の自らの政治献金授受をどのように考えるのか、それを当の小沢氏は明確にすべきでしょうが、この会見でもそこには言及していません。そこに、いささか欺瞞めいたものを感じざるをえません。
ともかく氏がこうした見解をのべているのに、同党の党政治改革推進本部とやらは、全面禁止を打ち出さない「改革案」を提示しています。モラトリアムを設ける、これが同本部の結論です。猶予期間という、いわば激変緩和措置をとろうとするところに、むしろ私は、この党も企業献金に深く依存している現状にあることを強く思うのです。献金を現にもらっている議員側からすれば、政治活動資金が激減することになるという現実。これを慮っての改革案というところでしょうか。

この小沢氏の発言について尋ねられ、わが麻生首相はつぎのように返答しています。私は、迷答弁だと思います。
昨日のエントリーでふれたように、自民党政府はこれまで、政党助成金について、「政党は議会民主制において不可欠の存在であり、その担い手である政党は公的機能を果たしており、そのコストとしてその政党に助成してしかるべき」と主張してきました。いわゆる民主主義のコスト論です。

今回の麻生首相の答弁をみてみますと、

企業も社会の中において、民主主義のコストを払うべき立場にあるんではないかと。したがって、その、企業団体の、いわゆる自由というもの、認めてしかるべきだし、企業団体側から献金が政党に出されて、なされたということを、禁止っていうのが、よく私には理解ができない
http://www.asahi.com/politics/update/0428/TKY200904280312_01.html

と発言しています。話し言葉で冗長なところがありますが、ようは、?企業も民主主義のコストを払うべき立場にある、?よって、献金を禁止するには及ばない、ということです。

先の政府の見解とこの首相の発言は明らかに異なります。どこか。
少なくとも政府はこれまで、民主主義のコストを語る場合、それは政党助成金にかぎってのことでした。一方の首相はそうではなく、コストとしての企業献金を語っているのです。明らかな飛躍です。
民主主義の、と仮にも銘うちながら、そのコストを献金という形で特定の政党にわたすというのですから、論理的にもおかしなものです。
首相が無知なのか、政府のこれまでの言い分すらよく理解していないことを示しています。
結局、小沢氏の発言と民主党の対応、そして麻生首相の会見での発言には、日本の政治が政党助成金企業献金にかんじがらめにされている状況が消しようもなく反映されているのではないでしょうか。

政党助成金違憲訴訟の資料(2003年政治資金報告書にもとづく)によれば、

     企業団体献金 政党助成金
自民党 59.9 13.8 73.7
民主党   0・5 84.6 85.1

ということです。ですから、極論すれば、両党はすでに企業管理、国家管理の政党になっているということでしょう。
こうして企業献金政党助成金に依存し、カネにしばられている現状をあらためなければ、政党から国民との距離がいっそう遠ざかるのは当然だと考えるのですが。。