「失われた10年」再び


IMFが経済見通しを発表しました。

09年世界経済、景気後退入り  IMFが初めて明記

国際通貨基金IMF)は22日、世界経済見通しを発表し、金融危機の影響で、世界経済が景気後退入りしたと初めて明記した。2009年の世界全体の国内総生産(GDP)成長率はマイナス1・3%と予測し、1月時点の見通し(0・5%増)を大幅に下方修正。日本も6・2%減と戦後最低水準に落ち込むとした。

 IMFは世界経済が「第2次世界大戦後で最も深刻な景気後退にある」と指摘。経済見通しは「前例がないほど不透明で大幅な下振れリスクが存在する」と警告、さらなる下方修正の可能性にも言及した。

第2次世界大戦後で最も深刻な景気後退にあるというのがIMFの現況判断です。だとすると、そこからいかに脱却するのか、景気回復の実効ある手立てがとられなくてはなりません。日本も最後最低水準に落ち込むという見通しですが、では麻生内閣がとろうとしている景気回復策が的確なものかどうか。

麻生内閣と与党がまとめた「経済危機対策」は総額15兆円を超える過去最大の規模。ところが、政府の宣伝にもかかわらず、世論調査によるかぎり評判は芳しくないようです。
結局、15兆円が何に使われるか、そこが見抜かれているからでしょう。庶民と中小企業にはお金が回らない。「経済危機対策」でうたわれているのは、高速道路・巨大港湾など大型工事に費やす2.6兆円。さんざん宣伝されているエコカー買い替えによる補助や省エネ家電購入の際のポイント還元でも、しだいにワーキングプア化する日本社会のなかで恩恵を受ける人の割合はいったいどれくらいになるというのか、疑問です。

たとえば贈与税減税、50兆円の公的資金で株式を買い取る株価対策も盛り込まれていることに端的に表れているように、こうした景気対策の重点をどこに置くのか、そこが対策が的確か否かを分ける分水嶺といえるでしょう。この点では、後期高齢者医療制度の存続と障害者自立支援法の応益負担も上記経済対策に入っているのですから、政府が引き続き社会保障の抑制政策をすすめようとしていることもはっきりしている。つまり、従来の骨太方針の堅持の姿勢はかわっていない。

小泉内閣の打ち出した骨太方針200」は、?社会保障を抑制するとともに消費税を増税する、?大企業減税と軍事費の聖域扱いとする財政運営−という本質をもっていました。これを引き継ごうとしているのです。

税制の「中期プログラム」を改定するという政府・与党の方針は伝えられています。中期プログラムは、全額を「社会保障の財源」に充てるとして、2011年度からの消費税増税を掲げています。政府・与党は「経済危機対策」に、国債の増発で積み上がる財政赤字の手当てとして、税制の中期プログラムを早急に改定するというわけです。


「景気回復には消費増税」 伊藤元重氏が講演 名古屋「正論」懇話会

こうした発言は、それを後押しし、加速させようとするものでしょうが、繰り返していえば、消費増税や骨太方針しようとする者の軸足が徹底して大企業や高額所得者に置かれていることを露骨に示すものといってよい。

内需を弱め、外需・輸出依存に拍車をかける路線が、日本経済が陥っている深刻な景気悪化の原因だと考えるので、内需を強める対策をとることがいちばん必要な手立てだと思うのです。こうした立場からすると、消費税増税によって景気回復をやるというのは到底認めがたい。
就学前の子ども手当てを1年かぎりでやめるのではなく、少なくとも食料品や生活必需品には消費税を課税しないなどの手立てをとる一方で、本来、税金を払える立場の者から負担をしてもらう、大企業・大資産家に本来の負担を求めることは必要な財源を確保する上で必要ではないでしょうか。

聖域を温存しようとする路線、すなわち骨太方針に固執する立場からの決別、これこそ今、求められている景気対策だと考えるのです。それができないのでは、ふたたび日本には「失われた10年」がもたらされるにちがいありません。
庶民にとってはほとんど着たいできない支出の後始末を、消費税増税という庶民にとって重たい負担でやらせようという路線にノーをつきつけなければなりません。