制度の欠陥を認める− 介護保険の要介護認定新制度を見直し


要介護認定基準の経過措置を通知 厚労省


厚労省が見直し作業をすすめてきた要介護認定制度。今春から新たな認定方式全面的に以降する予定だったが、その目的がただ給付費の削減にあるとする内部文書が国会で暴かれ、厚労省は追及され、事態は一変したといえる。
そして、ついに新認定制度は半月ばかりで見直しに追い込まれた。「経過措置」という名で、従来の要介護度を継続することを可能とした。欠陥制度であることを自ら認めたに等しい。
厚労省が認定制度を見直す理由としてあげてきたのが、認定の基礎データの更新、変更率などの地域格差の是正、認定調査や認定審査会の実務負担の軽減などだった。その見直しのポイントは、?認定調査項目と調査内容の変更、?一次判定ロジック(コンピュータプログラム)の変更、?認定審査会による二次判定方法の変更、の3点。

見直し案が公表された当初から、つぎのような問題点が指摘されていた。

・新方式へ移行すれば、いっそうの軽度判定化がすすむ
・介護認定審査会では、一次判定結果の妥当性を検討するための材料が著しく制限され、適切な判断・救済が不可能になる恐れがある
・一次判定、つまりコンピュータによるロジックが重視されることで、認定制度自体が闇の中に置かれる

軽度判定化という点では、最も重度である要介護5でも18.7%が軽度に判定されると結果が厚労省の公表した資料でも明らかになっていた(昨秋の第二次モデル事業の結果)。厚労省はこれまで「新たな方式に移行しても統計上差異はない」などと説明していたが、それも小池晃参院議員の追及でうそをついていたことになる。
たとえば、新しい評価、判断基準はこんなものでもあった。「頭髪がない」のであれば、手がかからないから「自立」と判定されるという摩訶不思議なもの。また、「1分間座れる」と、大丈夫ということで「自立」になるというものだ。

誰でも分かるように、状態がかわらないのに、要介護度が下がることは、サービス利用の制限に直結する。厚労省は、このように一次判定で処理する情報を極力少なくした上で、判定はコンピュウータが下すというブラックボックスにし、給付費削減を図ろうとしたのだ。

こんな問題点が指摘されていた。
利用料が払えないとか、家族がいないために、これまで介助の事実がなければ、すなわちできる限り自分自身でやってきたことが「介助なし=自立」になってしまうという理不尽さだ。
介護の必要な人に必要なだけの介護を保障するというのではなく、ただ給付費を削減しようとする厚労省のねらいが明白になり、国民の反対の声、世論が厚労省に逆に見直しさせたというわけだ。