海賊を口実に海外に派兵する。。


世の中が西松違法献金問題で沸き返っているとき、見過ごすことのできない法案を政府は成立させようとしています。その先取りで、自衛艦が出港してしまいました。
メディアも多くを語りません。
社説から2つをあげておきます。

海警行動発令 海賊放置の「無責任」解消へ(3月14日付・読売社説)

自衛隊の活動がなしくずしに拡大している、といった一部の批判は、全く見当はずれだ。どの国も、アフリカ沖の海賊対策への艦船派遣は想定していなかった。新たな事態に新たな対応を行うのは当然のことである。

国連海洋法条約は、すべての国が海賊行為の抑止に協力する義務を明記している。4本の国連安全保障理事会決議も採択されており、憲法上の問題もない。

社説:海賊対策 新法で与野党合意を目指せ

結論を先にいえば、この法案は、海外派兵恒久法と集団的自衛権をねらったものだといえるでしょう。

この法案を閣議決定するやいなや、麻生政権は、3月14日には呉基地から2隻の護衛艦を出航させました。
同政権はこれを現行自衛隊法にもとづく海上警備行動といいますが、自衛隊の警備行動というのは、あくまでも日本近海を想定してのものです。したがって、これを根拠に世界のどこにでも自衛隊を派兵するなど、とうてい合理化することはできません。なし崩し的に派兵する今回のやり方は厳しく批判されて当然でしょう。

成立させようとしている法案は、時限法ではありません。恒久法であって、延長のために国会で審議を繰りかえさなければならない時限法と異なって、この限界を乗り越えようとするものです。福田政権が一度は旧テロ特措法を延長できなかったことは記憶に新しいでしょう。法案が成立すれば、国会には事後報告だけでよいということになります。

今回は、ソマリアという特定地域の海賊行為に対処するためという触れ込みですが、法案にソマリアを特定しているわけではなく、どの地域にもでかけることが可能なように設計されているという問題も含んでいます。

そして、法案は、保護対象を「日本関係船舶」に限定している現行法にたいして、それをすべての船舶に広げるとともに、武器使用基準を拡大して、これまで基本的に「生命・身体の保護」のために限っていた武器使用を「任務遂行のため」にも拡大しているのです。これまでの政府の公式見解が、「任務遂行」のための武器使用は、憲法九条の禁ずる武力行使に該当することがないとはいいきれないとしてきたことにてらしても、重大です。

政府は、なし崩しに派兵の既成事実を先行させながら、いっそうのアメリカの要求に応えようとしています。この法案の提出は同時に、民主党がこれまで国連決議があれば自衛隊の海外派兵には賛成だという態度をとってきたことを逆手にとって、これに同党を同調させようとするものだとみてよいでしょう。
自民党に「弱み」を握られたら、表向きの対決姿勢もとたんに畳み込んで、悪法とよばれるものであっても法案成立に協力するというのが、同党のこれまででした。
まさに今、政治資金規正法にからむ小沢氏関連団体への違法献金に世間の目が集中している、自民党政権にとってのいわば好機に、これを成立させようという魂胆です。

同法案が海外派兵の恒久法への突破口となるのは明らかですし、廃案にすべきものでしょう。
憲法9条をもつわが国での、海外派兵と集団的自衛権は必要ありません。
ソマリア地域の海賊問題を根本的な解決には、ソマリアの内戦終結と崩壊したソマリア国家とこの地域を政治的、経済的に安定させるための国際的な協力が不可欠であって、それならば、日本に求められているのは外交努力の積み重ねなのですから。