小沢氏が企業献金全面禁止を言い出したのは。。


「毎日」の上野央絵記者が、西松違法献金疑惑にからんで小沢氏の言動と周辺の反応を記事にしている。
急変:ダミー献金事件 小沢氏続投か、民主に憶測拡大

小沢氏は昨日、企業献金全面禁止について語った。むろん私は、ならやってみろと率直に思っている。
これまで10年近く、多額の献金を受けたことに頓着しない人物が、全面禁止を語る資格がはたしてあるのか。10年の自らの行状を深く反省し、あるいは全面的にこれを否定し、過去の自分から生まれ変わったのであれば別だが。そんな劇的な変化がここ10日ばかりの小沢氏にあったとは思えない。

しかし、淡淡と彼はテレビの前で語ったのだ。
そのことを上野氏は記している。
上野氏といえば、以前に当ブログでつぎのように取り上げたことがある(参照)。

彼女は「記者の目」でこう書いていた。

狭い県土に日本の4分の3の米軍専用基地が集中する沖縄では、県民が米軍関係者による事件事故に巻き込まれる確率も高い。防衛省によると、06年度は全国1549件のうち沖縄は6割超の953件。人口10万人当たりに換算すると、本土の140倍の高確率だ。過去10年ほぼ変わらず、基地集中の実態を忠実に反映した数字といえる。

私はこれを以下のように受け止めた。

最近では、われわれの目にするこの種の記事は、日米同盟を是認し、これを存続することをよしとする立場から書かれたものが多い。その点で、上野記者の一文は異色であって、輝きをもっていると私は思う。
つまり、上野氏の記事は「沖縄はその矛盾をもっとも鋭い形で引き受けてきたのだ。正確には、有無をいわさず押しつけられてきたといってよい。事件事故はその帰結であった」ことを鋭く衝いているのだ。

こんな上野氏が、記事で、民主党内での小沢離れの確実な広がりに言及している。逆に言えば、唐突な小沢氏の企業献金禁止発言は、むしろこうした(党内の)事情を反映していることは否めない。党内での小沢氏の存在がこれまでは、同党を一つに束ねてきたといえる。視なくして民主党はかろうじて一つの政党としての体裁を保ってきた。政権交代というかけ声も小沢氏を欠いてはなかった。

けれども、一般には、記事が紹介するように、「禁止は無理だろうとの本意が隠されているのでは」とか、「自分の秘書が企業献金の嫌疑で逮捕されたのに論理の飛躍だ」といわれても少しも不思議ではない。
冒頭にのべたように、つい先日まで企業献金のどこが悪いと強弁していたのに、一転、その禁止を言い出したのは、劇的な変化を導いた契機が存在し、それが国民に理解されないといけないだろう。

秘書の拘留期限が迫るなかでの、小沢にそういわしめたのは何か。
政権交代をめざす同党にとって、全面禁止を形式上、打ち出すことによってのみしか、自民党とのちがいを印象づける手法が他に見出せないという理由以外に見当たらない。
それでも、小沢氏が本気で全面禁止をやろうと考えていると思う国民がどれほどいるのか疑わしい。小沢氏の会見は、ぎりぎりの抵抗と芝居の両面だと表現してもおかしくはないと私には思える。
24日にも想定されている第一秘書の起訴処分の有無で、事態はまた一回転して動き出す。