消費税増税のエンジンを止めるために


昨年12月24日に閣議決定された「中期プログラム」(参照)。2011年からの消費税増税と、そのための法的措置を講じる事、法人税減税をうたっています。同時に、「基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げのための財源措置や年金、医療及び介護の社会保障給付や少子化対策に要する費用の見通し」をかかげて、そのための財源にする方向も打ち出しました。

私は、これまでのように、単に社会保障財源のための増税という強調の仕方ではなく、消費税増税のために社会保障の機能強化などをむしろ前面に押し出し、充実のために増税が必要だという強調の仕方に変わっていることについてのべましたが、同プログラムはそうした手法に則った文脈になっていると思います。

とはいっても、麻生首相の命運は2011年までは到底見通せるものではないことは衆目の一致するところではないでしょうか。だから、ある意味では無責任ともいえる。けれど、歴代の自民党政権は、消費税増税を国民に問うたことはありません。そうではなく、選挙の際には増税しないとのべ、争点にもせず、(消費税関連)法案を多数を借りて強行してきました(参照)。

しかし、あえて、政府が強行採決からちょうど20年になるその日に、消費税増税と実施のためのロードマップを閣議決定したことが、消費税増税という課題が政権を担う自民党にとっては、当面の重要な政治課題だという位置づけを示唆しています。別のいいかたをすれば、それだけの決意がそこに示されているとみてよいのかもしれません。

より正確にいえば、自民党が重要な政治課題として位置づけるのは、財界・大企業の強い要請に沿うためです。財界は、すでに「税・財政・社会保障の一体改革「提言」を08年10月2日に発表しています。つまり、財界・大企業にとってこそ、消費税増税は不退転でのぞむ課題なのです。ですから、安倍も、福田も消費税増税をのべ、そして麻生政権もまた、打ち出したというわけです。つまり、消費税増税は、財界・大企業を優遇する自民党政治の今日的な根幹政策といってもいいでしょう。麻生以後の政権もまた、消費税増税から逃れることはできないのです。政権交代が仮になった場合でも、民主党は早晩、消費税増税をいいだすにちがいないと推測します。

「中期プログラム」は消費税増税のための推進エンジンです。推進エンジンはただし、これにとどまりません。09年度の与党税制「改正」大綱です。ここでは、海外子会社の利益を非課税化する証券優遇税制の延長などを盛り込むなど、より露骨に優遇姿勢を強調しています。
「中期プログラム」と与党税制「改正」大綱と、09年度予算案はけっして脈絡がないものではありませんし、昨日の麻生氏の施政方針演説は、「中期プログラム」と「中期プログラム」という二つのエンジンを駆動させて、消費税増税までいきつこうとする自民党の意図をあらためて明確にしたものと指摘することができます。

財界・大企業が望むのは消費税増税という終着点です。そこでは、冒頭のプログラムに明記されているような国民に増税を強いる一方で、企業の税負担を抑えるための財源を確保しようというものです。これまでの輸出戻し税という優遇、法人税増税に眼がむかないようにし税負担を回避する手段−という消費税は、二重の意味で財界・大企業にとって欠かせないものとしてあるのです。

二つのエンジンが駆動できないようにしなければなりません。
それは、財界・大企業のこれまでのふるまいを直視することからはじまります。新自由主義諸政策と労働者派遣法の改悪は、極端な富の集中の要因として機能しました。
同様に、税制面では、この間の消費税(増税)が応能負担という点でみれば、いいかえれば払うべき者が応分の負担をする点でみても、いかにゆがみをつくってきたのか、審判をくだすのは国民ではないでしょうか。大企業にモノをいわなければなりません。
所得の再分配を認めるならば、これはただちに正さなければならない事態に日本は直面しています。
財界・大企業は応分の負担をせよ−こう迫って、実現させることが必要だと考えるのです。


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