消費税増税− 口実を変えた政府


消費税増税を税制「改正」関連法案の付則に明記する方針を麻生首相は固めたといいます。
これに、菅直人氏が以下のように反応しているようです。あいかわらずの政局をからめた反応です。
菅氏の期待がどうであろうと、消費税増税を付則に盛り込むという意味を考えないといけません。だから、菅氏が最初に言うべきは「国民に増税の是非を問うべきだ」ということであり、同時に、民主党は消費税増税にどんな態度をとるのか明示するということではないでしょうか。これに、菅氏がどんな態度をとるかを私は知りたいのです。
つまり、税制改正法案の付則に盛り込むということは、法案がとおれば増税を基本方向として確認するということにほかなりません。
民主・菅氏「消費税で与党混乱」 自民の造反期待

さて、繰り返し主張される消費税増税

かつては、消費税増税社会保障財源のためという口実を全面におしたてていました。そもそも新自由主義構造改革は、消費税の割合を高め税構造を大きく変えることを、高コスト構造からの転換の一環として位置づけてきたのでした。財政を持続可能なものにしていくために、5年間で1兆1000億円の社会保障費の削減がかかげられてきたのは周知のとおりです。こうした社会保障費削減と抱き合わせで、一方では07年12月の与党税制改革大綱では税体系の抜本的改革が明示され、消費税は主要な財源とすることがうたわれています。

しかし、社会保障国民会議が設置されます。福田首相のときです。
社会保障国民会議の議論は、それまでの議論とは若干、趣を異にしているように思えます。
これまで少なくない消費税関連のエントリーを当ブログでも記してきましたが、あらためてこのエントリーで、社会保障国民会議の設置前後での、消費税増税論者たちの議論の変化に着目し整理しておきたいと思います。

すなわち、設置以後は、社会保障と財源の関係から持続可能性を強調した従来の削減路線から、社会保障の機能強化を強調した論旨、論点に変化しているということです。財政再建を理由に社会保障費削減を主張しながら、持続可能性のために消費税増税を正当化し使用とする方法では展望を見いだせず、社会保障の機能を強化するために消費税増税が必要だという主張への変化です。

たとえば、こんなふうに。

「制度の持続可能性」を確保していることは引き続き重要な課題ではあるが、同時に、今後は、社会経済構造の変化に対応し、「必要なサービスを保障し、国民の安心と安全を確保するための"社会保障の機能強化"に重点を置いた改革を進めていくことが必要である(中間報告

その後の麻生首相の「中福祉・中負担」発言もこの流れに沿ったものであって、社会保障国民会議最終報告(08年11月)「機能強化」のための追加財源分を消費税率で換算した数値が示されたことで、機能強化という理由で消費税増税を正当化しようとする方向は明確になったといえるでしょう。経団連はすでに昨年10月、「税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言」を発表しています。その基本は、上記「機能強化」論と同じ地点に立っています。

必要な箇所に財源を重点的に振り向け、制度の安定的向上、綻びの解消を図るべきである

などに端的に表現されているのではないかと思います。
ですから、今後は、消費税は社会保障に使われないと単純化するわけにはいかず、政府・自民党、そして財界のいう、機能強化ということに問い直さなければならないということです。
消費税増税の口実に、社会保障の機能強化をいっているのですから、では機能強化とはいったい何か、社会保障が充実をするのか、それを問うことが必要になります。詳細をふれることができませんが、私は、中間報告、最終報告を読む限り、これまでの医療改革の名であげられていたものの繰り返しのようにしか思えません。機能強化というふれこみで、あたかも国民よりの社会保障充実を図るかのような装いですが、じっくり点検してみる必要がります。

増税への障壁をできるだけ低くしようと強調されている社会保障の機能強化論。それを阻止するためには、社会保障拡充とそれにふさわしい財源をどのように確保するのか、そこで国民的な合意を形づくることが求められています。その方向は、貧困のこれだけの深まりのなかで明らかなのでしょうが。
すなわち、貧困と格差を拡大させてきた自民党政治からの転換、つまり社会保障と財源の関係でいえば、歳入歳出のあり方を見直すこと、つまり税のつかいみちと税をどこからとるのか、所得税の累進性強化・法人税課税の強化、ムダな公共事業や防衛費の見直しは欠かせない論点ではないでしょうか。もちろん、公費と事業主負担を高めることが不可欠だといえるでしょう。

冒頭に戻ると、麻生政権の消費税増税明記方針は以上の経緯をふまえたものであるのは論をまちません。さて、社会保障を充実させる上で、消費税増税が不可避なのかどうか、消費税増税にどんな態度をとるのか、これを各党に問わねばなりません。