オバマのナイ起用に対する懸念


米駐日大使にジョセフ・ナイ氏 オバマ新政権

オバマ新政権への期待は、医療保険制度の改革、金融危機への対応など、彼がこれまで取ってきた態度から判断して期待が高まるばかりです。
私は、しかし、オバマが大統領選で当選した際、いくつかの懸念をもっていました。それは、以下のエントリーで記したとおりです。
この報道による限り、その懸念がますます深まる、そんな印象をもちます。

懸念の一つは、彼の対日外交姿勢でした。
ナイが駐日大使に選ばれたのは、先のエントリーで指摘した、オバマがナイをブレインにしていることと連続しています。つまり、その時点でもっとも私が心配したのは、「いっそう日本への要求、米国の肩代わりを求める圧力は強まる」ということでした。
ナイの駐日大使就任は、おそらくそれを追認することになるのではないでしょうか。
日本は今以上に、財政的・人的に負担を迫られるという覚悟を迫られているということです。

しかし、考えてみるに、日本の戦後は極論すればアメリカ一辺倒でした。アメリカという目標が一つあって、それに追いつき追い越そうというのが、戦後の歴史だった。いつでも米国の顔色をうかがい、いつでも米国にしたがう、米国といわば運命共同体ともいえる関係が築かれてきました。その大元に、日米安保条約があるのは周知のとおりです。政治的にも、経済的にも、離れがたい米国との関係を自ら位置づけてきたのでした。

敗戦から60数年。米国を盟主として、米国の要求に基本的に従順にしたがってきた結果の一つが、今日の金融危機とそれが及ぼす日本経済の影響に端的に表れています。おいおい明らかにされるでしょうが、米国側の要求にしたがって、今日の金融危機、世界経済の危機の発端となった、サブプライム関連の商品を買った日本の銀行資本の損害はいったいどれほどの金額になるのでしょうか。国民を納得させるような解説は今もってなされていません。それほどに、誤解を恐れずいえば、米国のいいなりに、盲目的に行動するのが日本だといいきってよいのではないか。

だから、このような日米のきわめて非対称な、主従の関係、あるいは一方が他方に追随する関係は、経済だけでなく、むろん政治にも貫徹されており、それを今、あらためて問い直す必要があると考えるのです。
当ブログが主張しつづけるのは、今日の日本政治のゆがみは、財界・大企業への途方もない優遇とともに、米国への盲目的といわんばかりの追随ぶりです。

ナイの就任前にあらためて喚起しなければなりません。
いっそうの米国の対日要求に、毅然として対処できる政府が必要です。
ナイの起用は、朝日がいうような「オバマ政権の対日関係重視の表れ」というきれいごとでは私はないと考える。日本の肩代わりを、まさに実行に移すための特段の起用だといえるのではないか、こう思うのです。

世間の米民主党オバマ氏への期待とは裏腹に、強く懸念するのはこのことです。米国のアフリカ系住民の期待を一身に受けて当選したオバマ氏ですが、日本にひきつけて考えると、こんな不安を抱かせる政策の持ち主でもあることをけっして無視するわけにはいきません。

関連エントリー
オバマ当選に思う
新テロ法延長の意味・または・民主党の動揺