朝日見解にたいする疑問− 「対決」を強調したところで。。


星さんが、いくら「激突国会である」と語っても、とてもそう思えないのです(朝日新聞1・6、「政態拝見」)。
通常国会が5日に開会しました。たしかに冒頭から、民主党は第2次補正予算をめぐって対決の姿勢ですが、少しも自民、民主の対決の姿が私には浮かびません。つまるところ、定額給付金をはずすかはずさないか、それをめぐって両党がつっぱりあっているにすぎないのではないでしょうか。
星さんと私がよぶのは、朝日新聞編集委員星浩氏。そう、日曜日の田原総一朗の「サンデープロジェクト」にコメンテーターとして登場している人物です。
少し、その星さんのいうところを引用してみましょう。

自民、民主両党が政権を争う事実上、初めての総選挙。基本的には勝った方が政権に就き、首相を取り、政策を実現する。まさに天下分け目の戦いだ。政治家同士の真剣勝負を期待しよう

ということなのですが、ほとんど有権者の意識と乖離していると私は思います。
たしかに今回の選挙にあたって、自民党はダメだと思う人が多いのは事実。世論調査でそのことははっきりしています。同時に、この種の調査が示しているのは、自民党に代わりうる政党として民主党なのかといえばそうではなく、ある意味で(有権者は)消極的選択に甘んじているというところでしょう。

私にいわせれば、消極的選択であるにせよ民主党に落ち着くようにセットされているという意味で、二大政党制を志向してきた支配層の思惑は保持されている、このことが重大ではないかとも思えるのですが、しかし、当初の二大政党制のねらいは、今日にいたって、事実上やや修正を迫られているようにも思える。事実をあげてみれば、昨年の参院選後の、福田・小沢の大連立密室協議は、少なくとも自民・民主で政権を維持し続けるという意味での二大政党制の本来の目的を根底から崩すものであったはずです。そして、今日。自民党の次期選挙での退潮を誰もが否定しない状況の下で、自民、あるいは民主党の周辺で何が起こっていて、私たち有権者の前に示されているのでしょうか。
どんな形で結実するのか、それを今の段階で予測するのは並大抵ではありませんが、少なくとも、従来の自民党民主党の枠組みを超えたところで、新しい政党の姿というものを模索され議論せざるをえないところに、自民党は、そして民主党もまた追い込まれている、これが率直な感想です。
つまり、二大政党は変容を迫られているということでしょう。

もっと以前に遡ってもいえることなのですが、ごく最近でいえば、舛添氏が製造業での派遣を否定するかのような、あるいは企業の内部留保の活用に言及するような河村官房長官の発言は、「自民党は、そして民主党も追い込まれている」と私がのべたこととけっして無関係でないように思えるのです。もはや自民、民主を区別する意味すらない、事態はこのような地点まで進んでいるというのが私の見立てです。両党の境界は、事実上溶解して区別がつかないといえる。
たとえば、河村氏の発言が仮に本音だとすると、民主党はこれにどう応えられるか。答えは、ノーです。民主党の立場では、内部留保を取り崩せとはいえない。そんな方針すらもっていないのですから。すなわちこれは、これまでの自民党の立場と同じものです。発言が逆に本音から出たものでないとしても、民主党はおそらくこれに反論すらしないでしょう。

こういうふうに考えた上で星氏の文章に戻れば、星氏のいうところはまるで絵空事に思えます。まったくの虚構の対決だといいきってもよい。
そんな架空の対決を強調するより、今は、まさに日々、深刻化している景気悪化にたいする具体的な対応、そこに政治が手を差し伸べなければならないのでしょう。たとえば、それは、解雇拡大をこれ以上、広げないことで全党が一致することではないか。それに反対する政党があれば、その政党に総選挙で明確に審判を下す。これこそ、星氏がいう私たちが「試されている」ことではないでしょうか。