内部留保を吐き出せ− 河村発言を全党一致で実行させよ。


この記事を知って、正直少々動揺した。驚いた。
河村官房長官:雇用維持、内部留保で 企業に活用促す

自民党内閣官房長官にこう語らしめるのは何か、考え、疑った。
なにぶん、財界・大企業に拠ってきた自民党が雇用の確保に内部留保を活用せよというのだから。共産党がいっているのではない。河村氏の発言がパフォーマンスでないとすれば、大いに評価してしかるべきだ。
この際、自民党にはこの発言にもとづき、財界・大企業に強く要請し、形あるものを成果として我われの前に提出してほしい。あわせて、この官房長官の発言を受け、全ての政党が内部留保の活用で一致するならば、日本の政治史上、私は画期的な出来事だと評価しても、けっして大げさではない。
すでに明確にこれを主張している共産党はともかく、そのほかの政党はこれに言及することはなかった。つまり、当ブログが再三、主張しているように日本の政治シーンでいったい大企業・財界にまともに要求をつきつけることがあったのか。そうではなく、大企業・財界には、たちまちモノいわぬ、まるで僕でもあるかのようにふるまってきたのが日本の政治だったのだから。
したがって、氏の言葉を額面どおりに受け止めれば、一つの驚きであることにまちがいはない。

金融危機が各国の実態経済を揺さぶりつづけ、今現在、明確な脱出法が示されたわけではけっしてない。いまだに対応策は見出しえてない。
だからこそ、大方のエコノミストたちがこぞって、深刻な今日の不況から回復できるのは2010年だと予測するのが、いよいよ真実味を帯びている。日経新聞は、それをつぎのように紹介している(1月3日付)。

2009年の日本経済は実質国内総生産(GDP)が米欧とともにマイナス成長に陥り、回復の糸口を見つけにくい状況が続きそうだ。民間エコノミスト15人に予測を聞いたところ、景気交代が深く長くなるとも見方が大勢を占めた。金融投機による世界と同時不況で昨秋以降、輸出と生産が急激に落ち込み、雇用調整が消費不振を招きつつある。本格回復は10年にずれ込む見通しだ。

と。
米国が主導するカジノ資本主義に浸りきり、海外での消費に依存してきた多国籍企業のこれまでのふるまいにまったく頓着することなく、「輸出と生産が急激に落ち込み、雇用調整が消費不振を招きつつある」と断じるところがいかにも日経的だ。国内消費を軽視する一方での輸出依存こそ、金融危機の影響を深刻にさせた要因なのは、すでに多くの識者によって指摘されているというのに。

国内消費を上向きにするためにも、国民の生活を温めなくてはならない。それは、たとえば雇用確保に最大限の努力を払うこととまったく矛盾しない。そのためにも、財界・大企業は率先して、これまで貯め込んできた内部留保を活用すべきなのだ。その一部で、どれくらいの雇用が確保できることか。いくつかの試算が明らかにされている。
この文脈にそっていえば、河村官房長官の発言自体は、積極的意味をもっているのだ。

冒頭に戻るが、河村氏がこう、仮にパフォーマンスであるにしても発言せざるをえないのは、不況の深刻化のなかで内需を高めなければならないという意見が正当で、それを与党といえども蒸しできなくなったからである。まったく身に覚えなく、突如、解雇を宣告されるのが労働者であって、片方で、その労働者の汗の結晶ともいえる利益確保で、財界・大企業が膨大な資本蓄積を図ってきたという、明らかに非対称な事実が多くの人に知られるようになったからである。
労働を、あえてこの言葉を使うが搾取することによって、巨万の利益をわがものにし、株主に配当しておきながら、雇用調整の名のもとに、まるで使い捨てのように労働者を扱う姿に、多くの人が気付きつつあるからである。

内部留保の一部を取り崩すことで、大企業が立ち行かなくなる、そんな虚弱体質では、少なくとも日本の多国籍企業はない。十分に体力がある。
本来、企業はその利益を蓄積し、労働者の賃金にあてるか、設備投資に備えるか、そして、あるいは急激な経済的・金融事情の変化にあてるのだろう。
だから、今回の、まさに金融危機に際しては、内部留保を一部取り崩しそれに対応しなければならないだろう。それが企業の釈迦的責任ということに応えることになる。また、回りまわって、内需をよぶわけで、すなわち企業の経営活動にも寄与することになるだろう。

今こそすべての政党が、内部留保を一部吐き出せの声をあげるべきだ。共同歩調をとるべきだ。そして、実行に移させなければならない。強い指導と監視が要る。
そして、それに同意しない政党はどこか、それを国民は見極める必要がある。そんな政党は総選挙で選ばないことだ。
河村氏のいったことが言葉だけのものであるのなら、我われは、自民党に手痛い、しっぺ返しを浴びせなければならない。