総選挙後− 3つの可能性

解散総選挙は予測がつかない。ただ私たちの眼前で繰り返されるのは、自民党民主党、両党の迷走ばかりだ。

二代つづけて政権を投げ出したのだから、やり残しの課題が当然ある。それは、改憲構造改革の継承だ。引き継ついだ麻生政権も、この2つの課題から逃れることはできない。

だから、首相になって真っ先に彼が強調し、約束したのは日米同盟であったし、派兵恒久法がことあるごとに取りざたされ、今国会では、新テロ特措法延長法案が自民党の重要法案に位置づけられている。派兵恒久法は改憲に連続する。
もう一つは構造改革の推進の課題だ。たしかにとくに小泉以来の構造改革がさまざまな面で破綻を来たし、たとえばそれにつづく後期高齢者医療制度も手直しに手直しを重ねてはいる。一方で消費税増税をセットにしながら構造改革を貫こうとする意思は明確に保持されている。
本来であれば、この2つが争点である。つまり、構造改革をつづけるのか、それとも国民本位の社会保障・福祉の充実へ転換するのか、そして、海外派兵の拡大をめざすのか、それとも武力によらず外交努力による平和・安全保障の枠組みをめざすか、それが問われる選挙だといえる。

本来といったが、2つの争点では、自民党民主党ともに基本的方向は一致しているため、単純には争点になりにくい。だから、政権交代の強調であるし、景気回復に専念なのである。

今回の総選挙は、しかし、選挙後のありようが、選挙の結果の議席配置で異なる。
一つは、自民党公明党過半数を制した場合。
自民党は、民主党を切り崩し、派兵恒久法を実現すると予測できる。
消費税増税を実施するだろう。
もちろん小沢代表は退陣し、先にのべた2つの課題で一致する部分で少なくとも大連立が可能となる。

2つ目の可能性。
民主党単独で過半数議席を獲得した場合。これに、民主党と、共産党を除く他の野党で過半数を上回る場合もこれに加えてよい。
構造改革は継続されるし、派兵恒久法は民主党案で自民党も巻き込み、成立される方向に動く。実践的には自民党と協調するだろう。

3つ目。最後の可能性は、共産党が前進し、共産党もふくめて野党が過半数を占めた場合だ。つまり、民主党共産党を無視しえない立場に立たされる。この場合にのみ、反構造改革の展望はみえてくる。野党4党共同提案の後期高齢者医療制度廃止法案がいま衆院で議論されているが、この制度の廃止が現実となる可能性は高い。
消費税増税は困難に直面するし、派兵恒久法は、民主党がこの場合であっても自民党と手を組む以外に成立の見込みは立たなくなる。

この意味で、総選挙は日本の将来を決める選挙である。政治体制の変化をもたらす契機となるものだ。
(「世相を拾う」08243)