大幅減益で労働者を切り捨てるトヨタ
トヨタ自動車は2008年4〜9月期の連結決算結果を公表すると同時に09年3月期の業績見通しを下方修正した。それによると、営業利益は前期比70%以上減益の6000億円、従来の予想を1兆円下回った。けれど、それでも6000億円なのだから、率直に驚いてしまう。
米国の金融危機が世界中に波及し、自動車販売で米国市場に依存してきた日本の自動車産業の今を、この事実は端的に示すことになった。話はトヨタだけにとどまらない。ホンダも日産も今期大幅減益が見込まれており、自動車産業界のこの事態は、世界的景気悪化のなかでの日本の製造業の苦しい立場を象徴しているかのようである。
この事態を、日経社説(11・7)は、「トヨタ1兆円減益の衝撃」と表した。
トヨタを頂点とする日本の製造業界が試練に立たされていることを率直に吐露したものだと受け取れるのだが、たとえばその際、トヨタが苦境打開の手段としようとしているのは、労働者へのしわ寄せという、その意味での資本の単純明快な論理である。きわめて分かりやすくいえば、儲かるときにはさんざん働かせておいて、あるいは働くものを酷使し、絞りにしぼったあげく、法外な儲けを溜め込んでおきながら、一転、業績が悪化すると労働者を切り捨てるという、洋の東西を問わず、今昔のちがいもまた問わない、資本家の論理が今回も繰り返されているということだ。労働者は、まさに調整弁として、使い捨てられているのだ。
それは、こんな労働者切り捨てになるのだ。同じ日経新聞7日付がつぎのように伝えている。来年3月末までに5800人の期間従業員を削減するというのである。
トヨタの減益の要因は、むろん世界景気の悪化だけでなく、円高と材料価格の高騰が考えられる。が、一方で、日本国内での販売台数の低迷も、ことこの事態にいたって浮き彫りにされなければならないだろう。
外需だのみの日本の産業構造が問われているということでもある。
日本製造業の、ベンチマーク企業として存在してきたトヨタの現状は、すなわち日本の経済・産業政策を根本から問うていることにならないか。大企業は正社員を減らし非正規の労働者を増やすことで生産コストを切り詰め、輸出を増やして、大もうけを続けてきた。減益局面になって、非正規労働者を狙い撃ちして人減らしが始められるのは、正社員だと労働契約法にも盛り込まれた「整理解雇の四要件」が適用され、労働者との協議がないなど合理性のない解雇は強行できないからにほかならない。
企業は経営者、株主だけでなく、そこで働く労働者から成り立っており、商品を買うのは消費者である。企業はこの意味で、地域の支えがなければ存立しえない。企業さえ利益確保すればよいとし、労働者も地域も犠牲にしてよいのかということを今、問わねばならないのではないか。
企業の社会的責任はそこにあるのではないか。企業には雇用の責任がある。
(「世相を拾う」08228)