日米同盟か国連主義か、が問題ではない。


この上杉氏の文章を読んだ率直な感想は、思わせぶりな文章が鼻につくというところかな。

日米同盟か国連主義か、麻生vs小沢の激しい駆け引きが始まった

氏の主張はしかし、事実をもって打ち消されたことになる。
事実とは、民主党が、新テロ法延長案の審議、採択を容認する立場をすでに鮮明にしたという点だ。その結果、上杉氏の言葉を借りれば「麻生・小沢の激し駆け引き」は不発に終わってしまったということになる。
それでも、この民主党の「変わり身」の早さに反発は強く、後日、民主党自身が自民党との「対決」姿勢を逆に強調するハメになったことも伝えられている。そのかぎりでは、新たな展開もまったく予測しえないということではない。

結局、民主党はただ一点、同法案に反対の意思を表明することを担保に採択を認めたことになる。議事録では民主党が反対したことが(証拠として)残るだけなのだから。申し開きはできる。筋書きでは、こうだったのだろう。

上杉氏の論点の弱点は、つまるところ日米同盟か国連主義かという論立てから出発している点にある。そうではない。麻生も小沢も日米同盟に賛成だという点こそがいまの局面をとらえるにふさわしい観点なのではないか。小沢氏の国連強調というものも、その枠組みの中のことにすぎない。

簡単にいえば、表面上の麻生・小沢の対決などといっても、せいぜい程度の差異だと私は考えるのだが、上杉氏には少なくともそうはみえないらしい。がっつり対決にみえるのか。その点を、思わせぶりと私はいったのだ。

出発点での認識がそもそも私には問題だと思えるのだが、だから、その後につづく論点も現実とは相当にずれている。

同法案の可能性は2つだけある

だって。
氏があげる2つとは、衆議院での3分の2再議決か、民主党の賛成かなのだけれど、採決にからんで、いったいこれ以外の選択肢があるのか。ない。
氏は、当たり前のことをいっているにすぎない。

その後で、氏は同法案の成立の可能性を、衆院解散をふくめてシミュレーションしているが、先にのべたような「民主党のマジック」によって彼のシミュレーションはすべて否定された。重ねていえば、民主党は「反対」しながら、同法案が成立する道筋を選んでしまったのだ。都合のよいことに、それは、民主党の顔も立てながら、盟主・米国の意向に添えるというものだから。

自民と民主の協議の結果をへて、こうした民主の豹変とそれにもとづく「マジック」がつくり出される過程こそ、両党が日米同盟堅持という一点で共通していることを明示している。もともとこの点で一致していないとすれば、マジックを考えつくことすらできないだろう。

上杉氏が欠落させているのは、この点であって、20日採択が決まっている現在、こんな本質をとらえない予測がいかに現実と乖離してしまうのか、これを、この文章は如実に示しているのではないか。
単なる予測ちがいではすまない。氏もまた、世論操作のただなかにあるということだ。
(「世相を拾う」08204)


追記;自公民が新テロ法延長案の20日採択で一致したのは10日だから、上杉氏はそれ以前にこの文章を書いていることになる(9日付)。

民主党の直近の動向は以下(記;10月15日05時46分)。
新テロ特措法:民主、かじ取り微妙 与党解散動向不透明で (毎日)