豪総選挙、対米追随を投影。


オーストラリア総選挙で保守連合を破って労働党が勝利したという結果より、私の関心は何よりも、対米追随の姿勢にたいする強い批判が現政権の敗北をもたらしたということだ。ブッシュ政権の国際的影響力はますます低下している。これを裏づけるオーストラリアの選挙結果だった。しかも、ブッシュ大統領の盟友の一人とされていたジョン・ハワード首相が落選したのは、いっそうこれを印象づけた。
今回総選挙では、イラク派遣部隊の段階的撤退を主張していた、ケビン・ラッド氏を党首とする労働党が圧勝した。労働党は、米国との軍事同盟(アンザス条約)を重視する立場であって、この限りでは保守連合自由党・保守党)とかわりはない。けれど、イラク派兵に関していえば、派遣部隊の段階的撤退を訴えていたわけだ。
一方の保守連合・ハワード政権は、9・11テロ以降、アフガニスタン戦争、イラク戦争にいずれも参戦。文字どおり、米国のあとを追う同盟国としてふるまってきた。いまもイラク周辺に1500人の兵士を派遣、アフガニスタンにも派兵しているといわれている。
選挙戦では、こうした現政権の米国追随の態度に厳しい審判が下ったわけだ。米国の戦争への加担だけでなく、京都議定書問題でも米国の脱退につづき、ハワード政権が批准を拒否したことにも批判が集中した。
同じように、政権交代が喧伝される日本で、海外派兵など米国追随の姿勢が争点になるかといえば、かなり疑わしい。テロ特措法をめぐる議論を聞いていても、米追随を厳しく批判するという点では、政権交代をめざす民主党はそれを口にだすこともできないようだ。要は、自民党民主党のちがいは、オーストラリアでの労働党保守連合との差異、姿勢の差にも及ばないということだろう。もっとも、この労働党でさえ、先にのべたように米国重視の政策をかかげているのだが。けれども、労働党・ラッド党首のアピールは、対米追随からの脱却であって、国民はこれを支持したことになる。

この対米追随からの脱却こそ国際的な流れのように思える。中南米での中道・左派政権の連読する誕生はもちろん、オーストラリア総選挙の今回の結果はそれを教えているような気がする。同じ日の新聞には、ポーランドのトゥスク首相が公約どおりイラン駐留の同国軍を08年内にすべて撤退させる方針を示したことを伝えていた。

こうした世界の国々と比較すると、日本は異質の国、別世界を歩んでいるように思える。盟主米国のために国会会期を再延長することも辞さないというのだから。
米軍基地再編を交付金までつかってやる国ニッポン、法外な思いやり予算を惜しまぬ国ニッポン、首都東京に広大な米軍基地をもつ国ニッポン、東京湾の入り口に米空母の母港をもつ国ニッポン。こんな米国いいなりの異常さはもっと知られてよい。
いよいよ世界がブッシュ大統領を見放す、そんな時が迫っているようだ。米国と一緒にどこまでも日本は国際的孤立の中にいるのだろうか。