経済見通しは確かか


先ごろ、内閣の経済見通しが発表されました(参照)。09年度の経済成長率を実質でマイナス3.3%(名目でマイナス3.0%)としています。昨年12月には実質成長ゼロを公表していたのですから、それを大幅に下方修正したことになります。
この見通しが確かなものかどうか、政府の説明による限り、たいへん疑わしいと感じざるをえません。
平成21年度経済見通し暫定試算(平成21年4月27日)

というのも、IMF国際通貨基金)が20日に発表した世界経済見通しでは、日本の実質成長率をマイナス6.2%としたのですから、両者の見通しには大きな隔たりがあります。麻生内閣はマイナス幅をかなり小幅に見込んでいるということです。
この両者のちがいは、政府が、追加経済対策の効果が7―9月以降あらわれ、成長率を1.9%押し上げることができるとしていることに尽きるでしょう(以下) 。見通しは、政府の追加経済対策の実効性にかかっているというわけです。

○平成21年度の実質GDP成長率 1.9%程度押上げ
(内訳)

  • 民間最終消費支出:0.7%程度
  • 民間住宅: 0.1%程度
  • 民間企業設備: 0.4%程度
  • 政府最終消費支出:0.2%程度
  • 公的固定資本形成:0.6%程度

(四捨五入の関係で合計と一致しない)

ところが、経済対策というものは、「定額給付金」や自動車、家電製品の買い替え補助など、国民の家計を支援してくれるといっても、継続的な支援ではありませんから、そもそも効果に限りがあるというもの。むしろ庶民にとっては、生活必需品にも課税されている消費税を軽減する方が効果大ではないでしょうか。
イギリスでは消費税税率引き下げをすでに実施し、EUも消費税減税で合意しているのです。
日本政府の対応は、こうした世界の動きに逆行していて、景気が回復したら消費税を含む税制改革を必ず実施するなどと言いきるのですから、その姿勢の違いは歴然としています。

経済対策の基本を内需拡大にかじを切りなおすことこそ求められているとかんがえるのですが、アジアの内需拡大や欧米金融機関の不良資産処理をあたかもあてにするような発言(たとえば与謝野馨財務相)を聞くと、依然、外需に依存しようとする態度に変わりはないといってよい。

日本経済は極端な派遣労働者の増大を生み出してきました。その結果、家計消費が落ち込み、内需が停滞するという悪循環を生み出しているのですから、たとえば労働者派遣法を元に戻す。雇用の安定・創出を図り、家計の購買力拡大と内需の活性化につながる政策をとることが今、政府につきつけられている課題だと考えるのです。