勤務医の「反乱」

病院の勤務医を中心にした医師会「全国医師連盟」(仮称)が、今年夏までに誕生する。13日、東京都内で開かれた総決起集会で設立を決めた。全国的な医師不足と勤務医の過重労働が社会問題になる中、開業医が中心の日本医師会とは異なる立場から問題提起していく考えだ。

総決起集会には医師約110人が参加した。参加を表明しているのは全国各地の約420人。勤務医や研究医が約8割を占め、平均年齢は43歳。医療現場で労働基準法が守られるよう、連盟を母体に個人で加入できる労働組合をつくる。国民への医療情報の発信、医療紛争の解決に向けた取り組みなども検討していく。

勤務医中心の医師会設立へ 過重労働などで問題提起

医師不足が語られ、患者のたらい回しが報じられる背景には、医師の働く環境の悪さがある。その労働環境が限界に達して、医療事故の引き金にもなっている。地域で医療機関が産科を休止したり、撤退するなかで、極端な場合、子どもを産めないなどの実態すら指摘されてきた。こんな医療をめぐる現状を、小松秀樹医師らは医療崩壊という言葉で表現してきた。
労働基準法は労働者の働く労働環境の最低基準を定めるものといえるだろうが、医師の世界では、そのものさしすら実態として存在しなかった。労基法とは無関係に医師は働いていた。別のいいかたをすれば、医師の社会的使命というものをよいことにして、日本の医療は成り立ってきたといえる。月4、5回の当直は普通で、なかには7、8回と入る研修医すらいる。
しかし、たとえばこんな過酷な労働の環境に加えて、日々、患者の生死に直面せざるをえない緊張とストレスかの連続のなかで、医師が疲弊し現場を離れていくのが今日、日本の医療をめぐる状況である。医師の使命感で支えられた日本の医療も、内部の疲労が限界に達して、いよいよシステムの機能不全に直面せざるをえない事態に至っている。

全国医師連盟を設立しようという今回の動きは、直接には医療崩壊をもたらす根源の一つにもなっている勤務医の労働環境の改善を視野に入れたものだ。曲折もあるだろうが、医療界に一石を投じるものになるのは確実だろう。


【関連サイト】
全国医師連盟設立準備委員会