「化石賞」と地球温暖化


180カ国が集まり、地球温暖化防止について話し合われた「バリ会議」。同会議は、国連気候変動枠組み条約第13回締結国会議(COP13)と京都議定書第3回締結国会合(COP/MOP3)を指す。

「バリ会議」進展に消極的と、日本「化石賞」上位独占(読売新聞)
気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)の会場では、世界中の民間活動団体の連合体「CAN」が、その日の会議の進展に最も後ろ向きだった国に与える「化石賞」を毎日発表している。
4日は日本が1〜3位を総なめにした。
1位となった理由は、ポスト京都議定書の枠組みで削減目標を明らかにしていないこと。2位以下は他の国が選ばれることが多いが、この日は2、3位にも日本を選出。2位の理由は、京都議定書を深めて広げるべきなのに逆に葬ろうとしていること、米国、カナダとともに受賞した3位は、途上国への技術移転に消極的なことが理由だった。

この会議の中で日本のイニシャチブも期待をされたのだろうが、記事によるかぎり、そうではなかったということだろう。「化石賞」とはなんとも皮肉っぽく、温暖化防止への努力を惜しむ国々への最大の批判ともいえそうだ。
ことに日本は上位を独占したのだから、これ以上の不名誉はないのかもしれない。日本が受賞対象となった理由は、記事のとおり、?削減目標を明らかにしていない、つまり不作為や、?京都議定書にたいする後ろ向きな姿勢、?技術移転に消極的、など、当初から締結国として温暖化防止へ努力しようとする姿勢そのものが欠如しているとしか思えないような理由だ。

この日本の姿勢とはほとんど対照的だが、オーストラリアが当日、京都議定書に批准した。むろん同国が労働党政権に移ったことによるもので、前ハワード保守政権が米国に追随して批准拒否の姿勢をとってきたことをあらためる明確な方針転換といえる。「新政権としての初仕事。気候変動問題に取り組むわが政権の熱意を示すもの」とコメントを残し、ラッド首相は排出目標達成のためにあらゆる努力を惜しまないことを表明した。

たいして厳しい評価を受けた日本政府の対応には、いぜん京都議定書の批准拒否の姿勢をとっている盟主米国への「思いやり」が反映しているのか、後ろ向きだったということだ。

バリ会議を準備する過程で、国連の潘基文国連事務総長は気候変動、地球温暖化問題の「緊急性が増し」、「いま行動しなければ、その影響は破壊的なものになる」と強調し、世界の指導者に「かつてない行動と指導力」の発揮を訴えていた(9月24日・「国連気候変動ハイレベル会合」冒頭演説)。
そして、事務局長談話で以下のとおりのべていた。

行動はいま可能であり、それは経済的にも意味を持つ。行動しないことのコストは、速やかな行動のコストをはるかに上回る。

長期目標という概念が提起され、多くの国が法的に拘束力のある目標を求めた。2050年までに排出量を半減し、気温上昇を2度に抑える必要性について、何度も言及があった。この問題はバリ会議以降の交渉課題で重要になるだろう。いかなる解決策も、公平で共通だが差異のある責任という原則に基づき、いかなる行動要件もそれぞれの能力にふさわしいものでなければならない。

間違いなく、先進諸国がいっそう大きな排出量削減をする必要がある。同諸国は引き続き、この面で指導性を発揮しなければならない。

ことあるごとに国際貢献や国際協調を口にする日本政府だが、この分野でこそ先進国にふさわしい役割を発揮すべきではないか。地球温暖化温室効果ガスの排出抑制は、地球全体の課題だ。けれど、とりわけ重い責任を負っているのは、先進工業国と産業・企業だ。現に世界の人口では2割にすぎない先進国は温室効果ガスの排出では6割を占めるといわれているし、その大半が産業用やエネルギー用のものだ。
1997年、京都で開かれた気候変動枠組み条約の締約国会議(COP3)は、「京都議定書」でまず先進国が2008年から12年までに排出量を6%削減するときめた。
削減どころかその後も排出量が増えている日本政府の責任は、いよいよ重大だと指摘せざるをえない。「化石賞」は受賞すべくして受賞したといえる。