カップ麺で懲戒処分される世界


カップラーメンを差し入れた巡査長に、便宜供与の意思があり、あるいはやけどをさせる意思があったということを処分した側が説明しえなければ、懲戒処分そのものが成り立たず、その意味が問われることになります。

留置管理係:容疑者にカップラーメン提供、懲戒処分に
留置中の容疑者に禁止されているカップラーメンを食べさせていたとして、北海道警監察官室は22日、札幌方面の警察署留置管理係の50代男性巡査長を減給100分の10(1カ月)の懲戒処分にしたと発表した。巡査長は「いつも冷たい弁当ばかりだったので温かい物を食べさせてやりたかった」と話し、辞職の意向を示しているという。
監察官室によると、巡査長は5月下旬から8月中旬にかけ、容疑者の男5人に、自宅から持ってきたカップラーメンを食べさせたりタバコを吸わせていた。留置管理規則は容疑者への便宜供与と受け取られる行為や、やけどの恐れのあるカップラーメンを与えることを禁じている。
8月下旬に容疑者の1人が別の署員に「カップラーメンをもらった」と話したことから発覚。監察官室は上司の同署次長の警視と係長の警部補を訓戒処分にした。

警察官の「いつも冷たい弁当ばかりだったので温かい物を食べさせてやりたかった」という思いは、常識的に考えれば人間的なまなざしに所以するのでしょうが、この巡査長の思いそのものが「留置管理規則」に反していることになる。その思いを素直に行動に移すのは違反し、意識しなかったり、意識はしても行動に移さなかった者は、規則に抵触しないということを意味しています。カップ麺を差し入れるというのは、それが留置場の外であれば何も問われることはないはずのものでしょう。ただ、留置場内で、留置管理に当たる警察官がなした行為という一点で、懲戒処分がおこなわれるという非合理。この記事の場合は、いわゆる温情が仇となったということでしょうか。
カップ麺の差し入れを、便宜供与や傷害の意思ありとみなし、懲戒処分にする留置管理規則に表現される警察社会の常識、価値が、少なくともその外部の日本社会のそれと隔たっているのは明らかです。