逮捕されなかった米兵の子

米兵の子4人を殺人未遂容疑で逮捕 バイク女性転倒事件
http://www.asahi.com/national/update/1205/TKY200912050197.html


東京都武蔵村山市で8月、道路に張られたロープでバイクの女性(23)が転倒し重傷を負った事件で、警視庁は5日、在日米軍横田基地所属の米兵の子の少年少女4人を殺人未遂の疑いで逮捕した。
組織犯罪対策2課と東大和署によると、逮捕されたのは15〜18歳の少年少女4人。4人の逮捕容疑は、同市伊奈平1丁目の市道を横断するようにロープを張り、8月13日午後11時半ごろ、通りかかった同市内の会社員のバイクの前部にロープを引っかけて転倒させ、頭蓋骨(ずがいこつ)が折れる重傷を負わせたもの。
4人のうち2人が基地内に住んでいるため、同課は日米地位協定に基づき米軍側に身柄の引き渡しを求めていた。同課は11月24日に殺人未遂容疑で4人の逮捕状を取ったが、米軍側が引き渡しに応じない状態が続き、今月1日に有効期限が切れたため逮捕状を更新していた。
捜査関係者によると、第1発見者が車で現場を通りかかった際、女性が倒れているそばに外国人の少年少女4人がおり、警察官が4人から事情を聴いたが、偽名を名乗るなど不審な点があった。近くの防犯カメラに事件直前、4人が映っていたという。

タイトルだけなら、一つの事故にからんだ逮捕劇を伝えただけのものと受け取られかねません。しかし、記事をよく見直すと、事故は今年8月のもの。逮捕はなぜここまで遅れたのか。
訳があります。理由は、日本国と米国の間に日米地位協定が締結されているからにほかなりません。記事にあるように、4人のやったことは明確に危害を加えようとしたことが明らかです。道路を横断してロープを張り固定していたのですから。しかも、真夜中の犯行です。その上、偽名を名乗っているのですから、悪質極まりないといえる。

米国が引き渡しに応じなかったのは、これまでの米兵の様々な犯罪が発覚したときにも必ず繰り返されてきたことです。ここに第一の問題がある。同時に、日本側に問題はないのか。警視庁は何をしていたのか、これが疑問として沸いてきます。それでも、逮捕状が出たのは11月。遅い。「第1発見者が車で現場を通りかかった際、女性が倒れているそばに外国人の少年少女4人がおり、」「近くの防犯カメラに事件直前、4人が映っていた」という状況から、日本国で日本人の犯行なら警視庁の逮捕もこんなに遅れることはなかったでしょう。地位協定はしばしば米兵にとっての治外法権を保障しているといわれていますが、この間の経過はそれを裏付けています。
警視庁が殺人未遂容疑で4人の逮捕状を取ったのが11月24日。1日に逮捕期限が切れるのに、引き渡しに米軍側は応じなかった。赤旗(4日付)もこれを報道しています。それによれば、事件のあった武蔵村山市が1日、米軍横田基地に説明を求めた際、米軍の返答は「(日本側から)正式に身柄引き渡しの要請を受けておらず、逮捕状も提示されていない。要請があれば、日米地位協定の規定内で協力する」ということ。
外務省・警察庁など政府の対応は、この点で問題ありといえるでしょう。
日米両国の間には、普天間基地移設問題をめぐって山場をむかえています。日本国政府の弱腰は、この事件をめぐっても、従来の自民党政府の対応と少しもかわりません。日本国が米国に従属するという対応において。

こうした米兵や同家族の繰り返される犯行をとおしてみせつけられるのは、日米の非対称な関係の存在と、米軍基地によって日本の安全・安心がいかに奪われているかということです。