派遣村から1年。。


派遣村という新しい試みから、もうすぐ1年になろうとしています。
湯浅誠氏が民主党政権内閣府参与に抜擢されたことに端的に示されるように、この経験は、日本の社会と政治に少なからぬインパクトを与えました。
セーフティネットから抜け落ちる人びとは、社会的に救われなくてはならないというのが、ひらたくいえば派遣村という実践の精神だと考えるわけです。あれからほぼ1年。比ゆ的にいえばこれまで水際で申請そのものを排除することが一義的に考えられてきたといえる生活保護行政が確実に動きました。
こんな前進にもかかわらず、依然、雇用をめぐる状況は厳しい。厚労省自身の発表でも、雇い止めによる失業者の数は昨年10月から今年12月末までの予測値は、ほぼ25万人にのぼるのですから、年末をむかえるこの時期、緊急の対策が必要です。湯浅氏の起用をここで生かしてほしい。

日本のこうした雇用情勢をさらに悪化させるかもしれないと私たちを懸念させるのは円高の加速です。外為市場の円高は27日、1ドル84円台にまで急騰するという状況でした。これはアラブ首長国連邦ドバイ首長国政府が、政府系持ち株会社の債務返済の猶予を求めたことが報じられたことによって、欧州系銀行が債権を多く抱えているとの見方から欧州の株式相場は下落、外国為替市場では、高金利通貨などリスク資産を放出し、為替介入のリスクが少ないとみられた円を買い戻す動きが出て、対ユーロでも円高が加速したというのです。

早速、経団連の御手洗会長が反応しています。

経団連会長、日本経済は「がけっぷち」 円高がデフレと雇用不安を増幅する「リスクの連鎖」
日本経済が抱える「デフレ」「雇用情勢」という不安が消費者物価指数などの経済指標で改めてあぶり出された27日、急速に進む円高がこの2つの不安を一層増幅した。自動車、電機という輸出型産業の業績悪化はもちろん、消費不振から価格競争に走る内需型産業も、輸入品の価格下落によってさらなる値下げを強いられるためだ。すでに27日の東京株式市場は円高を嫌気して大幅安を記録。緩やかな回復を続ける日本経済は“リスクの連鎖”に襲われている。

「このまま行けば景気を押し下げる。(日本経済は)がけっぷちに立っている」

日本経団連御手洗冨士夫会長は14年4カ月ぶりに1ドル=84円台に突入した急激な円高に懸念を示した。自動車、電機など主要メーカーの想定為替レートは厳しく見積もった下期でさえ、1ドル=90円前後のところが多い。トヨタ自動車の場合、現行水準が続けば年間で1000億円以上もの利益が吹き飛ぶ。

氏の頭の中の大半は、いかに企業の利潤を確保するのか、で占められていると推測します。紙背にそれが透けてみえるような言い回しだと思いませんか。発言がどのような形となって現れるか、注目しなければなりません。まず私が予測するのは、いっそうの雇用環境の破壊、労働者へのしわ寄せです。

冒頭の厚労省発表と同日におこなわれた総務省の発表では、失業者が12カ月連続増であることが明らかにされました。10月の完全失業者数は前年比89万人増ということでした。年越し派遣村がつくられた昨年からなおいっそう雇用の破壊が進行しているということです。すでに一部では、民主党政権は抜け出しがたい苦境の中にあるという主張も出始めています(参照)。苦境の一つが、デフレ・円高というわけです。

この不況をめぐって、笑うに笑えない議論もある。責任のなすりあいでしょうか。

今の不景気「あなたのせい」 亀井氏と竹中氏がバトル
積極財政が持論の亀井静香金融・郵政担当相(国民新党代表)と、小泉政権構造改革路線を進めた竹中平蔵総務相が28日、民放のテレビ番組でバトルを繰り広げた。郵政民営化に反対した亀井氏と推進した竹中氏の因縁の対決とあって、互いに経済停滞をめぐる「失政」を責め立てた。
亀井氏が「小泉改革と称するもので日本経済の体力が落ちた」と口火を切ると、竹中氏は「小泉改革の間は成長し、改革を止めて経済が悪くなった」と反論。これに対し、亀井氏は「小渕、森両内閣で私が(自民党政調会長で必死に景気対策をやった。小泉の時に良かったのはその余韻だ」と再反論した。
収まらない竹中氏は「不良債権を放置したから亀井さんが去ったあと金融危機になった。財政拡大だけではダメだ」。亀井氏は番組後、記者団に「考え方の基本が違う」と語った。

こんな議論をやるくらいなら、さっさと手をうったらと率直に考えます。民主党政権には、雇用破壊から労働者を守る当面の緊急な年末対策をとってほしい。こう思うのは無理な相談なのでしょうか。