それでも米国になびきますか。


普天間基地移設をめぐって、日本国政府の態度が、閣内でも意見が異なったりして、不安感ばかりが今日まで募ってきました。鳩山首相にいたっては、そうした党内の事情を察してでしょうか、結論を先送りにしようしようという発言を繰り返しています。
この間の予算委員会では、民主党が野党として選挙に臨んだときの姿勢と、政権についてのちの発言の矛盾が浮き彫りになりました。国外・県外移転がそもそもの主張でしたが、時間が経つにつれて、まるで七変化のようにそれが変わり、岡田外相は嘉手納統合をもちだし、北沢防衛相は県外を諦めたような態度をとっています。いずれも、沖縄県民からすれば、公約違反の噴飯ものと即座に反発を買うにしか値しない民主党の対応といわなければなりません。
ですから、明日開かれる予定の沖縄県民集会は、今のこの状況のなかで沖縄の意思を明確にするという意味だけではなく、民主党現政権にむけてこの意思を突きつけ、公約違反を国内にアピールする重要な機会になると考えられます(参照)。
片方で、オバマ大統領の来日が近づき、その意味でも同集会は時宜にかなったものになりそうです。

新基地に新しい基地機能をもたせることが米国のねらいであることがすでに伝えられました。そうであるから、それだけに移転という課題を日本に実行させることに米国は力を集中し圧力をかけています。
そうした伏線もあるのでしょう、この数日、平野外相の集団的自衛権をめぐる発言がマスメディアをにぎわせています。
この発言は、オバマ来日もふくめて、今後の日米関係にたいする日本政府の位置づけ、別の言い方をすれば決意をあらためて米国に示すというねらいがあるように私には思えます。現行見解を捨て、集団的自衛権を解釈によって認めていくという筋道を米国に予め示すための発言だろうと思うのです。

日経新聞が「どうみる日米関係」と題して識者の意見を掲載する模様です。第1回は、北岡伸一東大教授(同紙7日付)。保守派として彼は日米安保を「アジアの安定に役立っている」と前置きしながら、鳩山氏が強調している緊密で対等な日米関係のあり方について発言しています。この論旨は、当然ながら、日経が支持する立場でしょう。

日本が安全保障上の役割を高めて対等に近づくならいいが、米国の役割を低めて対等に近づけるのは困る。これでは、「緊密で対等な関係]にはならない。

在日米軍再編問題などについて、鳩山政権がいつまでも決定を先延ばしするようだと、双方の不信感が高まり、「弱体で対等な日米関係」になってしまう

このように米国からみれば涙がでるほどうれしくなるであろう見地からものをいっています。まあ、「日米同盟の強化」こそ民主党のとる態度だというわけですね。
その米軍基地移転問題ですが、北岡氏はこう受け止めている。ずいぶん身勝手な論理だと思わざるをえません。負担をかけてきたのは申し訳ないが、今後もそれに甘んじよというに等しいものです。

沖縄の県民に負担がかかるのは本当に申し訳ないことだ。だが、地政学的に沖縄はとても重要な場所に位置している。・・・・・・沖縄からすれば、同県は本当に不運な位置にある。その分、日本政府は沖縄にもっと例を尽くし、色々な支援をすることで地元の負担を補うべきだ。首相自身も沖縄に行って、基地受け入れを説得すべきだ

しかし、地政学的に、とここでと表現するのは、その視点がまさに戦略を遂行する立場への支持を表明しているのです。戦略上、重要か否か、そこに住む住民にそれ自体は無関係のことです。
そうではなく、こう考えることはできないのか。
同じ民主党政権は、内容が具体的になってないとはいえ、東アジア共同体構想なるものを一度は打ち出しています。それを真に東アジアの平和と安定に寄与するものとして、隣国と手をつなぎ確立する道は開けないのか。沖縄県民もふくめて、もし同党の考える構想が平和・安全のためのものだと理解されれば、多勢の賛同をうることが可能でしょう。
北岡氏のような、現行安保条約を所与のものとしてそこから出発する考え方を一度、横こに置いた上で検討に値するものではないでしょうか。沖縄の人びとにこれ以上、犠牲を払えということはもう止めたらどうでしょう。今後は即座に止めることを私は支持します。
前段でふれたように、平野官房長官の発言は、今後の首脳会談の行方を暗示しているようでもあります。北岡氏は、平野氏がとりあげた集団的自衛権について記事でつぎのように語っています。

そもそも日米安保条約で日本は米国とは対等な役割を担っていない。米国は日本を守るが、日本は米国を守らない。その代わり、日本は基地を提供している

日本やアジアの平和と安定を守ろうとする米軍の活動に対し、日本がより大きな役割を担うことが必要だ。そのためには集団的自衛権行使を禁じている解釈を少し、見直すことがカギになる

もちろん北岡氏のいう対等な関係とは、軍事面での対等という留保がつきます。ようは対等な軍事的役割をもつということにほかなりません。いまや北岡氏と平野氏の発言の意味と両者の脈絡は明白でしょう。
北岡氏の発言は、民主党と同政権内の保守・改憲潮流を外からはげますものであって、平野氏はそれを加速させ、内外に広める点で一役買っています。
ですから、たとえば先の衆院予算委員会で、岡田外相のとったほとんど訳の分からない態度も了解される。岡田氏は、自分が同党代表のときの発言を指摘され、最近の彼の嘉手納統合案との矛盾を衝かれ、事実上、回答不能という状態にほかならなかった。理由は、代表だったときと今とは状況が違うというものでしたが、そういうだけで、何がどうかわったのか、明らかにしなかったのですから。
米軍基地再編問題はSACOに遡らなければならない(参照)。SACO合意は、岡田氏が代表を務めるずっと以前のものなのです。

こうした、無理をとおそうとする姿勢は、一皮むけばもう民主党の態度は日米政府合意、つまり辺野古に決定しているのではないかという疑いすら強くもつのです。しかも、集団的自衛権行使を約束するとなれば、この間の経過もふまえて、いよいよ対等な日米関係とはほど遠いものにならざるをえません。


追記;当然、社民党のとる態度が注目されます。福島氏の態度は、結果的に、政権保持を沖縄県民への共感に優先させるものといってもよいのかもしれません。
福島党首、沖縄県民集会への出席取りやめ 内閣に遠慮