偽装献金から申告漏れ、首相の座も問われかねない


「花・髪切と思考の浮游空間」に以下の記事を公開しています。
首相の偽装献金・申告もれ。単なる脇の甘さではすまされない。


どんないきさつで発覚したのか、それは分かりません。が、修正申告をただちにすると弁明しても、それは当然のことですから。むしろ分からないのは、鳩山氏ほどの資産家が税金に無関心であるはずはなく、それは個人が熟知しているかどうかとは無関係に、十分な対策をとっていると考えるのが普通でしょう。
今回の一件は、何を意味しているのでしょうか。
納税は個人のものでしょうが、以下にみるように、平野官房長官の言葉ですますことがはたして妥当なのでしょうか。

鳩山首相:7200万円申告漏れ 08年株売却、修正へ
鳩山由紀夫首相が08年に株を売って得た7226万円余の所得を税務申告していないことが分かった。毎日新聞の取材を受けた首相側が調べたところ判明し、明らかにした。首相の事務所は「売却益の扱いに手違いがあった。ただちに修正申告し、(衆院に提出した08年分の)所得報告書も訂正する」と話している。

政治家の所得や資産を巡っては、確定申告に基づき年間の所得を所属する院に毎年報告する所得報告書▽所有する不動産や株式、定期預金などを選挙のたびに院に報告する資産報告書(増加した場合はその都度補充報告)▽閣僚就任時と辞任時に行う資産公開−−などがある。

平野官房長官:鳩山首相の申告漏れ「個人の問題」
平野博文官房長官は2日午前の記者会見で、鳩山由紀夫首相が08年に株式売却で得た所得に申告漏れがあったことについて「事実関係としては把握している」とした上で「首相個人の問題だ」との見方を示し、「速やかに修正するということだ」と述べた。

そうとは思えません。なぜなら、首相には、すでに明らかなように政治資金報告について重大な疑義がかけられている。偽装献金問題です。ここでも、彼は修正につぐ修正を重ねているではありませんか。
そうであるなら、どうも鳩山氏は、自らも議員としてかかわったはずの政治資金規正法の改定を歯牙にもかけておらず、くぐり抜けれるものなら、いかなる手を回してでも外形を整えておけばよいくらいの認識ではないか、と考えられるのではないでしょうか。
税金の問題についても同様です。所得税法にもとづき、形式的に納税をしておけば事足りる、こう考えているのではないかと疑われるくらいです。つまり、適正に処理することには、それほどの関心がない、と。いわゆるコンプライアンスです。遵法などという言葉は、私なんかはしっくりこない感情の部分があるのですが、議員という「職業」は、立法府をベースにするものである以上、それが常に問われるであろうことは誰でも分かることです。
7000万円の申告もれをする人物に、たとえば話題になっている、母子加算の復活を心底よろこぶ生活保護受給者の心情がはたして理解できるのでしょうか。
この感覚のちがいは深刻ではないでしょうか。

冒頭に戻ると、これを自民党は鬼の首をとったかのように扱い、民主党攻撃の材料に使うでしょう。首相の偽装献金問題と併せて。政権誕生後まもない今の時期、政権の不祥事を何かと探し出そうとおそらく考えている自民党を助ける事態といえるかもしれません。
私はむしろ、この問題をふくめて、政治とカネの問題で、自民党民主党を隔てるものはないと実感するのです。もともと鳩山氏は自民党を飛び出した身ですので、その意味で根は一つということもできます。もちろんこういってしまうことは、自民党民主党の議員の中に適正に政治資金報告をおこない、納税をおこなう人物がいないということと同じではありません。

これは、鳩山氏が代表質問で答弁したように、誰が今日を招いたのか、あるいはあなたたちにはいわれたくない、と一蹴できるものではないでしょう。
一政治家として、それ以上に一国の首相として「政治とカネ」をどのように理解しているのか、申告もれはどんな要因で生まれたのか、国民・有権者に説明する責任があるでしょう。
首相ですから、まあガバナンスの力量が問われることはまちがいないわけで、その意味でも彼自身、周辺で起きる一つひとつにどのような見解をのべ、解決していくのか、説得力のある弁明でないと、その資質を問われる事態だと私は考えます。