政治の過渡期にあらわれる現象=その1

長年の自民党政権が倒れ、自民党とのちがいを強調する、新しい政党による政権が誕生したわけですから、日本は、政治の過渡期であることにちがいはなさそうです。今後の焦点は、強調されるちがいがはたして本物であるのかどうかと、それが定着するかどうかというところにあると思います。
今が過渡期というのは、当ブログが再三ふれてきたように、総選挙がおわり、来年の参院選を控える時期に今があるという、特別の期間であるという事情も手伝って、むしろ参院選の結果次第で、それ以後、いかようにもかわりうる、その可能性を実際にはらむからでもあります。
そうした特殊な条件に、現政権も、政権を降りた自民党もおかれているといいかえて差しつかえないでしょう。

このような政治の世界のありようは、もちろん周りに影響を与えます。
すでに、いくつかの世相についてふれてきました(参照)。
医師会もやはり揺れている。といっても、医師会もまた、これまで選挙のたびごとに態度決定がうんぬんされ、その態度のあり方がそのまま本来の自分たちのトップを決める会長選でみられるような、まさに政治家並のすさまじい派閥争いが展開されてきた歴史が繰り返されてきました。
その意味で、以下の記事から察することができるのは、あいもかわらず派閥抗争を引き起こす体質はかわっていないということです。彼ら医師会の各県会長を筆頭に幹部たちの頭にあるのは、いかに政治と結びつくかというただ一点です。それも、政権党にいかに近づくか、この点ではないでしょうか。

日医、自民支援を撤回 会長選、民主支持派が出馬へ

日本医師会唐沢祥人会長)の政治団体日本医師連盟は、政権交代を受けてこれまでの「自民党支援」を白紙にする方針を固めた。これに対し、総選挙で日医連の方針に反して民主党候補を支援した茨城県医師会の原中勝征会長は15日、現執行部では民主党と連携できないとして、来春の日本医師会長選に立候補する考えを表明した。

会長選には現職の唐沢氏も立候補を表明しており、政党とのかかわりをめぐる路線争いが本格化する。日医連は、10年の参院選比例区に組織内候補の西島英利氏を自民党から擁立する方針だが、影響を与える可能性もある。

こうした視点からながめれば、茨城県会長が従来と本質的に異なる態度を示したわけでは決してありません。ちがいは、ただ民主党が政権につき、彼が民主党にネットワークをもっているから、あるいはそれがより強いという点にすぎません。ようは、政権党のつながりのみが強調されるわけです。
けれど、こうした考えでは、医師会自身の脱皮もおそらく図り得ないし、社会保障制度、医療制度をよりよくしようと仮に医師会が思っていたとしても、それはうまくいかないだろうと私は予測します。

重要なのは、医師会が今まで以上に、あるいは根本的に考え方をあらため、地域住民とのむすびつきを強めることだと私は思います。かつては強固な自民党の支持基盤であり、事実上、絶対的な権力をもとに医師会が構成員、つまり加入している医師たちを締め付け、たとえば武見太郎が会長であった時期のように、政治的な圧力を陰に陽に発揮してきた。自民党との蜜月の時代もあったわけです。
しかし、時代はかわった。自民党政治の延命のために、かつての支持基盤をも食い進みながら、財界への配慮、優遇のみが前面に押し出され、自民党構造改革路線をひた走ってきた。かつては「守られていた」医師たちも、制度的な改悪とともに、自らの経済的な条件が切りつめられていく構造がすっかり定着し、かつてのような自民支持を貫徹する条件が奪い取られ、それができなくなってきたこともまた、周知の事実です。
高度成長期から低成長期に入り、自民党の路線として新自由主義構造改革へと、かじが切られる中での、以上のような医師会にみる変遷は、同じようにかつての自民党政治の強固な支持基盤であった諸団体・階層にもあてはまるように思えます。

自民党政治のゆきづまりの結果、ついに自民党自身が下野するという事態に直面した今、かつての自民党支持基盤の諸団体がとるべき方向は、政権に寄り添う方向を単に追求するということでは、自らの権益を守ることすらできない。
唯一、可能性があるのは、先にふれたように、地域住民とのむすびつきを強める方向ではないかと思うわけです。
地域住民はすでに痛みを押しつけられてきたわけですし、同じ立場におかれている彼ら医師会会員がその打開をめざすのなら、同じ立場の、痛みをおしつけられたもの同士が手をつなぎ、共闘するしかないだろうと私は思います。その点の強調が、まず第一にあって話はすすむのです。
過渡期を、まさに同じ苦しみを味わう者たちが、その苦しみから脱却する時期に転換していくには、現政権に寄り添うことで可能だと思ってはなりません。連帯する意思を相互に確認し手をつなぎ、政権を縛らなければ、あるいはそれを欠くようなことがあれば、それこそ参院選後にどのような展開があるのか、予測もつかないわけですから。


追記;たまたま数日前に会合があって、そこに県医師会の幹部が来ていました。途中、彼に電話が入り、何やらやりとりをしていました。周りに私以外には人がいたかどうか定かではありませんが、彼は周囲に確かに聞こえる程度の声で、この記事に関係する話をしていました。相手はもちろん医師会会員でしょうが、県医師会の立場は参院選で支持するのは○○だということを、しきりに繰り返していました。この記事と重ねあわせてみて、あらためてこうした日医の内実が分かります。すでに会長選で二分、三分されているし、参院選のとるべき態度をめぐっても当然そうだということです。