右往左往する政権交代真理教


政権交代を盛んに説き、それに固執してきたのは、ほかならぬ小沢一郎だ。彼の強力なイニシアチブがあったればこそ、政権交代間近に迫ったというのが大方の民主党国会議員の認識なのだろう。昨日、小沢氏が辞任会見した際、コメントを求められて原口一博の発言はいかにも残念とばかり、政権をとろうとするとき、なぜ辞任というニュアンスが読み取れるものだった。大方の民主党議員の認識がこのようなものだとして、では政権交代真理教ともいえる政権交代を至上とする論調を売りとしてきた人物たちはどう小沢辞任をみるのか。山口二郎森田実などは…。
森田実が「朝日」にコメントを寄せている。
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2007110500010.html

 首相との事実上の約束を守れなかったのだから、責任をとるのは当然だ。ただ、会見を見ていて「小沢さんは分かってないなあ」と思った。国民が彼に不信を持つのは、「政権交代をする」と言い続けて参院選で支持を集めたのに、違う方法をとろうとしたから。これでは国民を欺くことになってしまう。そもそも首相と2人だけで会談したのはなぜか。「密室政治」「独断専行」と言われても仕方がない。

 もしも党代表を辞めないまま政権が交代していれば、間違った人物が権力を持ってしまうところだった。もっとちゃんとやってくれると期待していたが、参院選の成功がおごりに転じた。英雄が失敗する典型的なパターンだ。

国民が彼に不信を持つのは、「政権交代をする」と言い続けて参院選で支持を集めたのに、違う方法をとろうとした、との認識には同意できる。であれば、責任は国民にたいしてとるべきだ。きつくいえば、国民にたいする裏切りだから。
森田の発言は平板だけれど、注目したのは、まるで掌を返すように小沢を糾弾している点だ。

党代表を辞めないまま政権が交代していれば、間違った人物が権力を持ってしまうところだった

だって。森田の所説はどうだったのか。こういっていたのは参院選直後。

7.29をもって「安倍自公政治」を終わらせる新しい民主党中心の力が、国民の中に育ってきた! 全国各地に「小泉・安倍自公連立政権」を否定し、民主党を中心とする政権交代を実行する力が育ちつつある。とくに注目すべきことは、民主党が大きく成長したことである。与野党逆転政権交代への道は開かれた!

小沢の臭覚による選挙戦術で参院選で勝利したのはまちがいないなく、少なくとも小沢のイニシャは発揮されてきたはずだ。

だから森田の認識では、参院選後、どこかで小沢が寝返ったことになる。

今回の福田首相小沢民主党代表の密室党首会談と「大連立」をめぐる政局の大騒動の本質は、アメリカのブッシュ政権が日本の海上自衛隊の給油活動をなにがなんでも継続させようとして福田政権に強い圧力をかけ、同時に対小沢一郎工作を仕掛けたことにある――これが私の基本認識である。

森田によれば外圧につぶされたというわけだ。外圧に屈した小沢は、間違った、と。
でも釈然としない。そもそもの小沢の年来の主張と自民党とが陸続きだというのが私の意見だし、主義・主張に天と地との差異があって「屈服」させることは困難なのでそうするためには肉体的・精神的圧力、つまり暴力を要することは歴史が教えている。右往左往する政権交代真理教。
政権交代は、そのための行動―それはさまざまだろうが―を国民に提起し、あくまでも国民とともにすすめる。これが基本なのだろうが。