医療の扱われ方

高速道路の両側には、なんと1キロメートルごとに緊急電話が設置されている。
実はこの緊急電話を設置するのに、日本道路公団には一台につき250万円もかけている。これだけでも驚きだが、原価が一台40万円だというから二度びっくりである。つまり、原価の6倍以上に水増しして工事が発注されているのだ。
全国の高速道路に設置されてた緊急電話の合計額は、いったいどのくらいになるのか想像もつかない。

こんなムダ遣いの一方で、本田宏氏が紹介する医療の現場、医師の技術の評価はつぎのようなものだ。

ちなみに、私が二人の胃がんの患者さんを手術し、それぞれ1カ月間、検査や治療を続けながら入院していただいて、やっと240万円程度の診療報酬が病院に入る。つまり、高速道路の緊急電話一台分に満たない金額である。胃がんの手術を一人でできるようになるまで10年近くかかることを考えると、ため息が出てしまう。

日本の医療がどんな位置を占めるのか、それを象徴的に示す話がここにある。日本の医療費の構成は、医師をはじめ医療従事者の人件費が50%に相当する*1。労働集約性が高い。だから、本田氏のあげる胃がん患者の例を借りると、120万円が人件費ということになる。これには、医師をはじめ看護師、検査を担当する放射線技師や臨床検査技師らの人件費がふくまれることになる。
氏が紹介するこの一例をとってみても、日本の医療がどんな位置におかれてきたかがわかるのではないか。厚生官僚をして語らしめた医療費亡国論が唱えられて以降、医療費が国家財政を脅かすと喧伝されて、医療費は抑制されてきた(id:coleo:20071014:1192262012)。
ようやく日本の医療費が決して高くないこと、医師不足の問題がメディアでも扱われるようになった。舛添厚労相が最近、医療費抑制は限界にきていると語ったが、これは本田氏らの行動による世論喚起の端的な反映だといえる。
誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実 (新書y)』は精力的に全国各地を飛び回る本田氏の各地の講演(氏の講演を聞いてみてそのように思う)をもとに整理されていて、分かりやすい。