ハーヴェイの新自由主義論


新自由主義路線の象徴ともいえる郵政民営化が昨日、持ち株会社日本郵政株式会社のもとでスタートした。
日本を席巻して久しい新自由主義が、社会の亀裂を生み出したばかりに参院選では手痛い仕返しを結果的に食らうことになった。その中での民間会社の発足であるだけに今後に関心を寄せざるをえない。

デヴィッド・ハーヴェイがその新自由主義について、歴史的に俯瞰し、その現在までを分析している*1
各章タイトルを列記する。

ハーヴェイの本書は、そのタイトルをながめてみてもすでに魅力的であって、たとえば新自由主義が「運動」として成り立ち、隆盛をきわめるまでには合意の形成があったはずで、ハーヴェイはそれも鮮やかに描き切っている。
下支えがなくしては成立しない新自由主義は、日本において、05年9・11選挙を一つの頂点として一気に前にすすむと思われた。だが、その2年後、いくつかの条件もあいまってそのベクトルは下方に向きをかえたかのようにみえる。本書は、いまの時期に読み返されることで、日本での新自由主義の対抗軸がどこにあるのかについてヒントを与えてくれるのではないか。

渡辺治による論文「日本の新自由主義」が巻末に収められている。左派の立場から日本における新自由主義の運動を分析したもので、その中で日本的特徴を抉出している。一読に値する。

*1:新自由主義―その歴史的展開と現在・作品社、原題;NEOLIVERALISM